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SS きねんび(前編)

 自分にとって、特別な人だから。
 うそ偽りなく全てを話すことが出来る。
 何一つ、包み隠さずに。
 それが、想い合う二人の理想の在り方だと。
 そんな風に、ずっと思ってた。

 でも・・・。幼い私は、その時まで気が付かなかった。
 大切だから、言えないこともあるんだ、って。

   きねんび


 今日もいつも通り、フェイトちゃんと一緒に早朝訓練。
 海鳴公園の高台で、私たちはそれぞれのメニューをこなす。
 朝は二人で一緒に何かをする、ということは特にない。
 強いて挙げれば最初の準備体操くらい。
 あと、背中合わせのストレッチの時にフェイトちゃんの綺麗な髪が首筋を撫でるのがくすぐったいことと、そこから香るフェイトちゃんの良いにおいが私のことをいつもドキドキさせてる。・・・って、それは関係ないね。
 私は高速アクセルシューターを空き缶を落とさないように当て続ける魔力制御の練習。
 フェイトちゃんは黙々とバルディッシュを降り続けている。
 時々横目でちらちらと盗み見しながら、フェイトちゃんかっこいいなぁ・・・と惚れ惚れする度にレイジングハートに注意を受ける。頼りになるパートナーは何でもお見通しだから困りもの。
「ラストいくよっ!」
 アクセル8つに空き缶8本。それぞれに99回目のヒットをさせて最後の一撃。
 その衝撃によって、8本の空き缶は真下に設置されているゴミ箱に一列になって放り込まれていった。
「うん、完璧!」
 レイジングハートも「お見事です」って褒めてくれた。
 8個も大分慣れてきたからそろそろ増やしてみようかな・・・。レイジングハートもきっとそう思ってるだろうし。
 自分のメニューを終えた私は、フェイトちゃんの側に座って見上げる。
 その一振り一振りから彼女の真剣さが伝わってくる。
 こういうときのフェイトちゃんの表情はかっこいいな、とも思うけどそれ以上に素敵だなって思う。
 フェイトちゃんはいつも最後の一振りを終えると、その姿勢のまま一時の間、動かなくなる。
 その時彼女が何を考えているのか、聞いたことはないけれど、私はその時の凛とした表情が一番好き。
 いつもこれを見るために、彼女よりも早く自分のメニューを終わらせていることは自分の胸元にいる紅玉さんには内緒。
 そして、ふぅ・・・と一息ついたフェイトちゃんは、いつものように
「・・・お待たせ、なのは」
と微笑んでくれる。
 いつも周りに気を遣い、周りに合わせてばかりの彼女が、この素振りだけは絶対に自分のペースを崩さない。
 いつもと同じペースで、同じ時間、同じ回数を振り終えるまで。彼女の、不可侵の領域。
 そのことが内心、私はとても嬉しかったりする。
「お疲れ様、フェイトちゃん」

「・・・バルディッシュって、かっこいいよね」
 クールダウンをしながら、別に何の脈絡も無く、心に浮かんだことをそのまま言葉にすると、フェイトちゃんは不思議そうに、戦斧さんの方はお礼を言われた。
「なのはも振ってみる?」
 そう言って差し出してくれた彼女のデバイスを、私は喜んで受け取る。
 ・・・しかし。
「はわわっ!」
「危ないっ! 大丈夫、なのは?」
 彼女から受け取ったその瞬間、私の腕は閃光の戦斧と共に重力に引かれてしまい、慌てるフェイトちゃんに助けられた。
「え? え? バルディッシュって、こんなに重いの!?」
 レイジングハートより重そうだとはずっと思ってたけど、まさかこんなに重いなんて思わなかった。
「これをあんな軽々と振り回してたんだ・・・」
 尊敬の眼差しに「そ、そんなことないよ・・・」とフェイトちゃんの頬が紅く染まる。
 そういう謙虚なとこも可愛くて好きだなぁ、って思う。
「フェイトちゃん、ちょっと腕相撲しよう!!」
原っぱにうつ伏せになってフェイトちゃんを促すと、ちょっと不安そうな顔をして私の手を取った。
 で、結果は。

 ぱたん。

 当然だよね・・・。
 もちろん、私は両手を使った。でも、握った右腕はびくともしなかった。
 フェイトちゃんは申し訳なさそうに腕を90度動かして、試合終了。
「フェイトちゃん凄いなぁ・・・。私じゃ、一生掛かっても追いつけないよ・・・」
「魔法は腕の力とは関係ないよ。なのは、魔法戦はあんなに強いでしょ?」
 服に付いた草を払いながら、フェイトちゃんはフォローしてくれるけど。
「だって・・・。それって魔法が使えなかったら、私役立たずってことだよ?」
 自分で言ってて悲しくなるけど。
「それは大丈夫。なのはのことは…」
「フェイトちゃんが守ってくれるんでしょ? それは、すごく嬉しいけど・・・。むぅ・・・今日は何だか複雑・・・」
 フェイトちゃんは困ったように微笑んで、黙ってしまった私の頭をそっと撫でる。
「なのはは真面目過ぎるんだよ。もっと素直に私のこと頼ってくれたら嬉しいんだけどな・・・」
 彼女の優しさまで無下にすることは出来なくて、私は無言で一度だけ頷いた。


 朝練からの帰り道。フェイトちゃんが突然、
「ここでなのはに問題です」
と、振り返る。
「ちょうど一週間後の今日は何の日でしょう」
 その問いに、心臓がどきりと跳ねる。
 一瞬、動揺する顔を見られはしなかっただろうか。
 彼女の表情は、私が当然のように正解を知っていて、答えてくれるのを待っているかのよう。
「・・・えっと、何だっけ?」
 虚を突かれたフェイトちゃんはちょっと驚いているみたいだった。
「本当にわからないの? ・・・・・・本当に?」
「・・・ごめん」
 フェイトちゃんの心が手に取るようわかる。きっと・・・傷付けてしまった。
「じゃあ、その日のお楽しみ、だね」
 彼女が努めて明るく振る舞ってくれているのが、更に私の中の罪悪感を煽る。
「えー、教えてくれないの?」
「ふふ、なのはのことびっくりさせてあげる。・・・あ、でももし思い出したらちゃんと言ってね。その方が嬉しいから」
 ・・・でも、私はどうすることも出来なくて。


 ***


 その日を今週に控えた月曜日。
 ずっとそのことで悩み続けて、満足に睡眠を取れていない私は思わず大きな欠伸をしてしまう。
 気分が、重い・・・。
 浮かない私とは対照的に、先週から少し浮かれ気味だったフェイトちゃんの機嫌は一気に跳ね上がって、今にも踊りながら歌い出しそうな程。
「今日のフェイトはまたずいぶんとご機嫌ね」
「何か良いことでもあったの?」
 すずかちゃんが尋ねると、フェイトちゃんの顔がさらににへーっとだらしなく緩む。
「え? わかる?」
「フェイトちゃん、鏡見てみるとええよ」
「実はねー」
 はやてちゃんの言葉をスルーして、三人の耳元をちょいちょいとたぐり寄せる。
 耳打ちを聞いた三人の頬が、少しだけ染まる。
「なのはには絶対言っちゃダメだからねっ」
 一人真剣なフェイトちゃんがとっても微笑ましく見える。
「あんたはまた・・・ホントに・・・」
「とっても素敵だと思うよ、フェイトちゃん」
 呆れるアリサと、感動に目を輝かせるすずか。
「それで、何でなのはちゃんは元気ないん?」
 そんな三人の中で一人冷静なはやてちゃん。
「どうしても、思い出せないんだって」
 唯一の救いは、今の私の現状を、フェイトちゃんがそう理解してくれていること。
「相変わらず、そういうことには鈍いわね・・・」
「ふぅん・・・」
 その答えに納得したのか、しないのか。はやてちゃんだけが微妙な表情をしている。
 こういう時のはやてちゃんは、油断がならない。
「なぁ・・・なのはちゃん」
 私に寄ってきたはやてちゃんを、フェイトちゃんがギロリと視線で威嚇する。
「言わへんって! 何で私、そんなに信用無いん?」
 はやてちゃんが「差別や!」とでも言いたげに叫ぶ。
 けど、それは仕方のないことだと思う・・・とは言わない。日々の行動って大事だよね。
『なのはちゃん、ホンマは気付いてるんとちゃう?』
『・・・何のこと?』
『・・・・・・。まぁ、それならそれでええけど・・・』
 念話で確信を突かれ、また咄嗟に誤魔化してしまう。
「二人を応援する身として、一つアドバイスがあるんやけど・・・どうする?」
「・・・。一応、聞いとく」


  ***


「はじめてじゃない? なのはさんがフェイトじゃなくて私を訪ねてくるなんて」
 リンディさんは嬉しそうに、私の前にお茶を置いてくれた。
 砂糖とミルクは? と聞かれて慌てて首を横に振る。
「でもちょうど良かったわ。私もなのはさんとお話がしたいと思っていたの」
「リンディさんも・・・・・・ですか」

 結局私ははやてちゃんの助言を受け入れて、この場にいる。
『自分だけで考えがどうしてもまとまらんなら、誰かに相談した方がええ。亀の甲より・・・って言うやろ? 例えば・・・・・・リンディ提督とか』
 『例えば』が的確過ぎて笑えてしまう。彼女のことだ、大体のことは察しがついているんだと思う。
 本当に変なところで鋭いんだから・・・・・・。

「フェイトちゃんは最近、家でもかなりご機嫌な感じですか」
「ええ、それはもう。なのはさんと二人でお祝いするんだーってもう大はしゃぎ・・・って、口止めされてたんだったわ」
 ついうっかり、という感じで舌を出すリンディさんは「でも・・・」と続ける。
「・・・本当は気付いているんでしょう、なのはさん」
 いきなりまたもや嘘を見抜かれ、私はびっくりしてリンディさんを見る。
「ということは、なのはさんが知らない振りをしている原因が今回の相談の内容ってことね」
 私は頷いて答える。
 流石・・・というか。これが『年の功』・・・なのかな?
「私が口を出して良い話じゃないってこと、ちゃんとわかってるつもりなんですけど・・・。きっとリンディさんに嫌な思いさせちゃうかもしれないから、もし答えたくないならそれでも全然構わないんですけど・・・」
 言っていて、私ってば一体何が言いたいんだろうって自分でも思う。
 ・・・ダメだな、私。前置きが長くなるのは自分に言い訳したいだけなんだって、わかってるのに。
 それでもリンディさんは頷きながら私の質問を待っていてくれる。
「フェイトちゃんと・・・プレシアさんのお話したこと・・・・・・ありますか?」
 怒られるかもしれない。でも、それを覚悟の上で、私はここにいる。
 今のままじゃ、先に進めないから。
「・・・話題は同じみたいね」
 リンディさんから溢れた笑みは、何だか少し悲しげに映った。


 私が知らない振りを続けている、例の日。
 忘れるはずがない。忘れられるわけがない。
 私たちの、大切な記念日。
 フェイトちゃんが友達になりたいって言ってくれて。
 フェイトちゃんが初めて私の名前をちゃんと呼んでくれて。
 その記念にお互いのリボンを交換して・・・。
 私たちが友達になった日。
 私たちの、始まりの日。
 それを彼女が覚えてくれていて、祝おうとしてくれていることは、とても嬉しいことであるはずなのに。
 素直に、それを喜ぶことが・・・出来ない。
 だって、私たちが友達になって一年が過ぎたということは――

 彼女が本当の「お母さん」を失ってから一年が過ぎた、ということなのだから。


「情けない話に聞こえるかもしれないけど、フェイトとプレシアのことを話したことはないわ。というか、私からは話すつもりはないの」
「そう・・・なんですか」
「私は、フェイトが話したくなったら、それを聞いてあげるだけ。信じてる、と言えば聞こえはいいんでしょうけど、向き合いたくないことから目を背けてる、とも言えるわね・・・」
「そんなこと・・・」
 フェイトちゃんはプレシアさんのこと、今はどう思っているのだろう。
 もう会うことの出来ない人? それとも、まだ次元のどこかで生きていると信じ続けているのかな。
 今でもまだ会いたいと、そして叶うのなら一緒にいたいと思っているのかな・・・。
「でも私自身があの子とちゃんと向き合う為には、そういう話をしなければいけないのかもしれないって、時々悩むこともあるわ・・・」
 ・・・意外だった。
 リンディさんでも、悩むことがあるということが。
 だから私も、すんなり自分の想いを口にすることが出来たのかもしれない。
「私、怖いんです・・・。フェイトちゃんを傷付けてしまうことが・・・」
 でも、本当の気持ちは、その奥にあったんだ。
「そしてフェイトちゃんを傷付けたことに、自分が傷付くことが・・・」
 フェイトちゃんの中にプレシアさんがいる限り、フェイトちゃんは本当の意味で私と向き合ってはくれないんじゃないかって、心のどこかで思ってる。
 彼女のことを心配しているのに、言葉にすれば、そんな独占欲にも似た想いで彼女のことを傷付けてしまいそうだった。
「・・・なのはさんは正直ね」
 責められるかとも思ったけど、リンディさんの言葉は優しい響きを持っていた。
「私、なのはさんが羨ましいわ」
 その意味がわからず、親友の母親をを見上げる。
「自分の気持ちから逃げずに、フェイトと、ちゃんと向き合おうとしてる」
 だからなのよね・・・、とリンディさんは続ける。
「私がどんなにあの子のことを大切に思っても、貴女には決して敵わないの・・・」
「そ、そんなこと・・・」
「あるのよ」
 リンディさんがちょっと拗ねてるように見えるのは、気のせい・・・かな。
「なのはさんと一緒にいる時のあの子、本当に幸せそうに笑うもの」
 そう言われても、よくわからない。
 でも、フェイトちゃんにはいつも笑顔でいて欲しいって思う。
 そのためなら何だって出来るって思ってる。
「だからね、正直今日は・・・ちょっとだけ嬉しいの」
 こういうの良くないって、わかってるんだけどね。とリンディは続ける。
「なのはさんが私と同じ事で悩んでいてくれることが・・・」
「リンディさん・・・」
「きっとなのはさんだったら、こんな問題すぐに解決しちゃうんじゃないかって。・・・・・でもそうしたら私、母親として立つ瀬がないなぁって」
「・・・私も同じ事考えてました。きっとリンディさんなら、って」
 お互いを見て、思わず吹き出してしまう。
「何だかこれじゃあ私たち、フェイトに恋するライバルみたいね・・・」
「こいっ・・・・・・」
 い、いきなり何言い出すんですかリンディさん・・・。
 って、そんな笑顔で見つめないで下さい・・・。
 うぅ、顔が熱い・・・。
 まぁ私の場合は負け戦だけれど・・・、という彼女の呟きまでは耳には入らなかった。

「ごめんなさいね、何の力にもなってあげられなくて・・・」
「そんなことないです」
 悩みを言葉に出来て、自分の中で少しは整理がついた。
 そして何より、同じ想いの人がいるってことだけで心強い。
「素直になのはさんが思っていることを伝えてあげて」
 それできっと、全て解決するから、とリンディさんは言う。
「気持ちは・・・絶対に伝わるから」
「はい、ありがとうございます! 頑張ります!」

 素直に、伝えたい言葉を、貴女に。


  ***


 ・・・とは言え、それって難しいよなぁって思う。
 既に、そのタイミングを逃しちゃってる気がする・・・。
 今になって、あの朝に正直に気持ちを告げなかったことが悔やまれる。
 ・・・それにしても眠い。睡眠時間は減っていく一方だ。
「馬鹿者ぉっ!!」
 怒号と共に意識を引っ張り戻される。
 今の状況を説明すると、武装隊の訓練の真っ最中。それも、チームに分かれての集団模擬戦。
 とても、余計なことを考えていられるような状況じゃない。
 正に今、敵チームの放った砲撃が、私の目の前を掠めていった。
「す、すいませんっ!!」
「これが戦場だったら、ここから体勢が崩れて・・・下手をすれば隊は全滅だっ! 貴様一人の不注意で全員を危険に晒すつもりか!?」
 駄目だ、ちゃんと訓練に集中しなくちゃ・・・。
 とは言っても、今日の私は後方支援。
 前線じゃないことも災いして、ふとしたことで意識がフェイトちゃんへと飛んでいく。
 フェイトちゃん、無理してないかな。本当は悲しいのに、無理して笑ってないかな。一人になった時、泣いたりしてないかな・・・。
 でも、これが私の杞憂なら、記念日を一緒に心から喜ばなきゃいけない。・・・自分の気持ちを隠して、そんな器用なこと、私に出来るのかな。
 だったら、この気持ちを全部伝えればいいのだろうか。それって、フェイトちゃんの心に水を差すだけじゃないだろうか。だとしたら、そんな最低なことってないよ・・・。
 ・・・逢いたいな。でも、逢っていいのかな。
 どうするかなんて全然決まっていないけど、そうしなければ、何も始まらない気がする。・・・でも、逃げ続けるよりは、ずっといい。
 決めた。この訓練が終わったら、フェイトちゃんに逢いに行こう。
 ・・・本当にいいの? それって、結局何も進展しないんじゃないのかな・・・。
 うぅ。また頭の中がごちゃごちゃになってきた・・・。
 どれだけ考えたって、正解なんて出ないのに。
「高町っ! いい加減に・・・しろぉっ!!」
 ぐるぐるしている私は、自分に危険が迫っていることに全く気付いていなかった。

 気合いを入れるための一撃で、まさか撃墜してしまうなんて・・・と、隊長は焦る。
「やっべぇ、やっちまったか!?」
 落下衝撃はちゃんとフォローしたし、砲撃そのものも加減はしたつもりであったが、思ったより綺麗に入ってしまったたのだろうか。
「た、隊長・・・・・・」
 少女のもとに駆け寄ると、彼女を抱える者が驚いた表情で隊長を見上げる。
「どうした、怪我でもさせちまったか?」
 不安そうに、隊長は尋ねる。もしそうなら、かなり面倒なことになる。
「・・・・・・寝てますね」
「はぁ!?」
 眼下の少女はすやすやと、安らかな寝息を立てていた。
「何なんだよ、一体・・・・・・」


   ***


「なのは、ごめんね・・・・・・」
 フェイトちゃんは突然、申し訳なさそうに顔を俯ける。
「私、母さんのところに行くよ」
 その響きから、フェイトちゃんの言う「母さん」がリンディさんではなくて、プレシアさんだってことが何となくわかってしまい、私は酷く動揺してしまう。
「どうしてっ!? プレシアさんは・・・もういないんだよ!!」
 あれだけ、彼女の心を傷付けないように、って思っていたのに、いざ自分が置いていかれそうにると手のひらを返したように、言うまいと思っていたことを口にしてしまう浅ましさ。
 プレシアさんがもういないかなんて、そんなこと本当は誰にもわからないのに。
 でも、フェイトちゃんは。
「母さんはちゃんといるよ? ほら・・・」
 彼女の視線を追っていくと、その先には本当にその人が立っていた。
 それは私が知るプレシアさんとは少し違っていて、とても優しそうな印象を受ける女性であった。
「じゃあ、なのは。またね・・・」
 フェイトちゃんは彼女の下へと駆け寄って、親しそうにその手を取った。
「お待たせ、母さん。行こう」
「・・・お友達はいいの?」
 私を気に掛けて振り返る母親に、フェイトちゃんは何の躊躇いもなく「うん」って頷いた。
「私、母さんと一緒に行く。母さんとずっと一緒に居たいんだ」
 そして二人は私に背を向けて歩いて行ってしまう。
「待って! フェイトちゃんっ!!」
 リンディさんはどうなるの!? クロノ君は?
 どこに行くの? 戻ってくるの? また、逢えるんだよね?
 お願い。せめて、それくらいは教えてよ!
 ねぇ・・・、待って・・・・・・。

「フェイトちゃんっ!!」

 ごんっ!!

「はぅっ!!」
「ぁいたっ!! ・・・・・・あれっ?」
 じんじんする額を押さえながら、私は辺りを見回す。
 ・・・えっと。・・・医務室?
「あれ? フェイトちゃん?」
 彼女の額も少し赤くなっている。
 というか、どうして彼女がここにいるのだろう?
 ふと、時計を見て驚く。えっ? 模擬戦から五時間も経ってる!?
「なのはっ・・・よかったっ・・・・・・」
 急にフェイトちゃんがぼろぼろと涙を溢し始めるから、私はあたふたしてしまう。
「ど、どうしたのっ、フェイトちゃん?」
「・・・・・・だってっ・・・、なのはっ、もう・・・目、覚まさないかとっ・・・・・・思ってっ」
 嗚咽混じりにそう言われて、私は自分が情けなくなる。
「大げさだよ、フェイトちゃん・・・。別に、どこも怪我とかしてないんだから…ね?」
 また心配させてしまった。
 いつも、空回りしてばかり。
 貴女から、全ての悲しみを拭ってあげたいと思うのに。
「・・・ごめん、フェイトちゃん」
 今は、貴女の涙しか・・・。


 二人で手を繋いでの帰り道。
 私は意を決して、口を開く。
「・・・フェイトちゃん、あのね」
「なのは」
 私の目を見てはっきりと、フェイトちゃんは名前を呼んでくれた。
 それだけで、私の言いたいこと全部わかってるよって、言ってくれてるような気がして。
「・・・明日なんだけどね」
 フェイトちゃんは私の髪を撫でながら、優しく語りかけてくれる。
「付き合って欲しい場所があるんだ」


                                          (後編につづく)


                                           あとがき
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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高町屋

Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

↓↓↓リリカルなのはの二次創作、同人活動をしている方、マイミク/マイピク募集中です。お気軽にどうぞ♪mixi pixiv Dolce

≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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※高町屋は「健全系」小説・漫画サークルを自称しています。本サイトでは成人向けは取り扱っておりませんが、なのはとフェイトがとてもとても仲良くするような表現が多々見られますので、そういったものはちょっと・・・という方は、ご覧になるのをお控えになったほうがいいかもしれません。
カテゴリ
リリカルプリキュア(2)


【長編】魔法少女リリカルなのはNightmare(59)
  第十三話
  第十二話
  第十一話
  第十話
  第九話
  第八話
  第七話
  第六話
  第五話
  第四話
  第三話
  第二話
  第一話

SS(7)
  ぷろぽーず ぱにっく!⑦
  ぷろぽーず ぱにっく!⑥
  ぷろぽーず ぱにっく!⑤
  ぷろぽーず ぱにっく!④
  ぷろぽーず ぱにっく!③
  ぷろぽーず ぱにっく!②
  ぷろぽーず ぱにっく!①
(ViVidとForceの間?/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  きねんび(後編)
  きねんび(前編)
(A's/なのは、フェイト)
  じぇらしー
(ちゅーなの/なのは、フェイト)
  わたしのままとまま
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  わがまま
(A's/なのは、フェイト)
  ぱぱ?
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ、機動六課)

漫画(22)
  勉強会⑦+⑧
  勉強会⑥
  勉強会⑤
  勉強会④
  勉強会③
  勉強会②
  勉強会①
  わがまま
  今は反省している。
  休日の過ごし方②
  休日の過ごし方
  戦場では一瞬の判断の遅れが死を招くんだ!
  共働きの核家族でありがちな風景
  間接キス⑤+⑥
  間接キス④
  間接キス③
  間接キス②
  2時間15分59秒。
  たしなみ
  虫刺され?
  またふーふー
  ふーふー

絵(20)
  ぜくしぃ!
  40000hit記念!!!
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  高町なのはで表情練習
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