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第四話「さよなら」④

先週ご質問頂いたのですが、
叙事詩のⅠ巻はホワイトキャンパスさんに委託している分が
まだ残っているようなので、そちらからどうぞ。

あとⅡ巻の委託に合わせてとらのあなさんにも
Ⅰ巻を若干数、再委託予定です。

ということで『続きを読む』より、
魔法少女リリカルなのはNightmare
第四話「さよなら」④
になります。

このNightmareは来週の分までが
Ⅰ巻の内容です。



   

 静かな部屋に響くノックの音。時間もいつもと変わらない。
「なのはー、お姉ちゃんだよ。入るねー」
 返事を待たずに、ドアが開かれる。廊下の灯りが眩しくて、目を閉じる。
「もう、また灯りも点けないで・・・。お姉ちゃんみたいに、目、悪くなっちゃうよ?」
 余計なことしないで。
 そう言いたくても言葉にはならなくて。顔を隠すことしか出来ない。
 部屋の隅で膝を抱えて丸くなっているなのはに、美由希は努めて明るく振舞い、決してその現状を叱りつけようとはしない。なのはが何の反応も見せなくても、毎日数度、決まった時間になのはの様子を伺いに来る。
「ご飯、食べなくちゃダメだよ? 怪我も治んないし、体調崩しちゃう」
 持ってきた時と何ら変化の無いトレイを見て、きっと美由希は少し悲しげな表情をしているに違いない。彼女の声がなのはの罪悪感を煽る。そして、そんな胸に沸き起こる罪悪感がとても鬱陶しくて、沸々と怒りが込み上げてくる。
 ご飯なんて、いらない。
 誰も、欲しいなんて言ってない。
 毎日、部屋に何度も来ないで。
 誰も、来て欲しいなんて言ってない。
「みんなリビングにいるよ? もうすぐ年が変わるからみんなで年を越そうって。なのはも行こうよ、みんな待ってるよ?」
 ・・・嘘だ。行ったって、私の場所なんて無い。
 沈黙を続けるなのはに、美由希は溜息を一つ。
「・・・そっか。うん、わかった。また後で来るよ。なのはが来てくれたら・・・嬉しいな」
 ・・・やっと、一人になれる。
 しかしそんな安心感はもう一つの足音によって掻き消される。
「・・・恭ちゃん」
 言葉を発さずとも、その存在感が、雰囲気が、突き刺さる視線が、私の心を掻き乱す。
 ・・・あれは私の嫌いな、私を追い詰める・・・強い信念を持った目だ。
「・・・一人前に悩んででもいるつもりか?」
「ちょ、ちょっと恭ちゃん!?」
 美由希は慌てて「恭ちゃんいきなり何言い出すの!?」と止めに入る。
 今回のなのはの件に関しては家族会議で、なのはが自分自身で立ち直るまでそっとしておこう、ということになった。なのは自身、家族の誰かに悩みを打ち明けるような性格ではないし、唯一悩みを打ち明けられるであろう相手が、今落ち込んでいる原因の一つである以上、彼女自身の力で乗り越えるしかない。
 しかし恭也は、一週間が経った今でも何の行動も起こそうとしないなのはに業を煮やし、止める美由希を振り払う。
「何があったのかは知らないが、これだけははっきりしている。お前がそうやって落ち込んでいることで解決することなど、何一つない」
 わかってる。そんなことはわかってるよ、お兄ちゃん・・・。
「今、出来ることは探せば幾らでもあるはずだ。お前はそれを探そうとしてないだけだ。現実から目を背けて、逃げているだけだ・・・・・・ぐぅっ!!」
 恭也の言葉は、美由希がその耳を摘み上げたことで強制的に終了する。
「ごめん、なのは! 言い方は厳しくなっちゃったけど、恭ちゃんもなのはに早く立ち直って欲しいんだよ。それだけはわかってあげてね・・・。ほらっ、さっさと歩く!!」
 恭也は美由希に引きずられて出て行った。
 お姉ちゃんに、お兄ちゃんに、家族に心配されているのが、痛いほどよくわかる。
 でも、それが今はとても辛い。
 出来ることなら、放っておいて欲しい。
 家を出ようと考えたこともあったが、そんなことに意味は無いと気付いた。結局、問題は自分の中にある「心配されている」という意識なんだ。それを振り切れない限りはどこにいても、何も変わらない。
 心配されるのが辛い。きっと立ち直ってくれるだろう、と期待されるのが辛い。でも、きっとそれは家族であれば当然のことなんだと思う。
 ・・・家族って、何?
 ふと、遠くから、鐘の音が聞こえ始める。・・・除夜の鐘だ。
 もうすぐ、年が変わる。
 すぐそこまで迫っている次の年は、いい年なんかであるはずがない。
 それならばせめて、彼女の為に祈ろう。
 フェイトちゃんが、執務官試験に合格しますように。
 フェイトちゃんが、幸せになれますように。
 フェイトちゃんが・・・、フェイトちゃんが・・・、・・・・・・フェイトちゃん・・・。

「もぉっ、恭ちゃんのばかっ!! あんなの返って逆効果だよっ!!」
「しかしなぁ・・・。あんまり甘やかすのは良くないと思うんだが・・・」
 痛みの残る耳を押さえながら、不服そうに反論する。
「朴念仁の恭ちゃんには女の子の繊細な気持ちなんてわかりっこないんだから、ほっといて!!」
「むぅ・・・・・・」
 そうまで断言されてしまっては、恭也としてはもう二の句が告げなくなってしまう。
 とは言え美由希も、恭也以上に何かを理解できているつもりなんてなかったのだけれど。
 家族の誰も、今のなのはをどう扱ったらいいのか、わからずにいた。


   ◆

 年は変わって、冬休みが明けた。
 しかし、学校が始まっても、ただの小学生に戻ったはずのなのはの姿はそこにはなかった。病気が原因らしい。
 それを聞いてアリサは一人憤慨する。
(何よそれっ!完全に仮病じゃない!!)
 もう、なのはとの付き合いも随分と長いが、こんなことは初めてだった。
 以前は、会いたくないから、という理由で会うことは出来なかったが、彼女のことだ、きっと自分と向き合う時間があれば立ち直ることが出来る、そう信じていた。 
 でも、それほどまでに落ち込んでいたなんて。
 週明けには、フェイトも学校に出てくる。
 それまでに何としてでも、なのはを家から引きずり出さなくては。
 その週末、アリサとすずかは揃って意気込んでいた。
 玄関で自分たちを迎えるのは以前と同じく、姉の美由希であった。訪ねてきた二人に返す言葉も以前と変わらない。
「ごめんね・・・。なのは、会いたくないって・・・」
 これまでずっと、彼女の意思を尊重する家族に気を遣って引き下がっていたが、今日は譲る気は無い。
「いえ、今日はなのはの意志に関係無く、なのはに会いに来ました」
「お願いします、美由希さん。なのはちゃんに、会わせてもらえませんか?」
 二人の真剣な視線に、美由希は泣きそうな表情で、首を縦に振る。
「お願い・・・。会ってあげて。情けない話だけど、私たちじゃもう、どうにもしてあげられないんだ・・・」
 それは、美由希が二人になのはのことを託したということ。それは彼女の友として、とても光栄なことに感じられた。
「なのは、入るわよ!」
 勢い勇んで一歩踏み込んだまでは良かった。しかし。
 ・・・・・・二人は言葉を失う。
 会っていないのはほんの二週間くらい。
 そんなたった少しの間で、人はこんなにも変わってしまうものなのだろうか。
 眼前のなのはは、目に見えてやつれ、瞳にも光が宿っておらず焦点があっていないようだった。部屋に入ってきたアリサとすずかにも気付く様子は無い。
「なのはちゃん・・・」
「なのは・・・、あんたどうしちゃったのよ・・・」
「あ・・・、すずかちゃん、アリサちゃん。久しぶり・・・」
 久しぶりに聞くその声には、生気というものが感じられなかった。
「なのはちゃん・・・大丈夫なの?」
「え、どうして? 私、元気だよ」
 冗談にしたって笑えない。どうしてその言葉を信じられようか。
「あんたやっぱり、学校サボったのね・・・」
「・・・・・・」
「わたしたち、なのはちゃんの力になってあげたいの。何か、出来ることないかな?」
「・・・なら、帰って」
「・・・どういう意味よ?」
 アリサは反射的に湧き起こる怒りを押し殺して問う。
「あたしたちじゃ、何の力にもなれないってこと? ・・・そんなのわかんないじゃない! あんたの代わりにはなれないけど、あんたの悩みを一緒に背負うことくらい出来るわよ!!」
「それが何になるっていうのっ!!」
 それは、二人の知らないなのはだった。
「それで未来が変わるの!? 口先だけの優しさで、無責任なこと言わないでっ!! お願いだからっ、もう放っといて!!」
 声の限りに、なのはは叫ぶ。自分の肩を抱いて、震え出す。
「違う、違うんだよ、なのはちゃん。落ち着いて・・・」
「触んないでっ!!」
 その肩に触れようとするすずかの手を容赦なく振り払う。
「ちょっと・・・、あんたホントにどうしちゃったわけ?」
 目の間にいるのは確かに良く知る昔からの友達なのに、別人と対峙しているような錯覚に陥る。まるで、何かに取り憑かれたようだった。
「・・・アリサちゃんには、わからないよ」
「・・・・・・っ!!」
 長い時間を一人で鬱屈に過ごし、人の凶器のような優しさに敏感になっていたなのはは、人の感情の移り変わりがよくわかるようになっていた。手に取るように、アリサの怒り、すずかの悲しみが伝わってくる。
 直情型のアリサだ。頬の一つも張ってくるかもしれない。
「アリサちゃん、だめっ!!」
 そんな危機をすずかも直感的に感じたのだろう。アリサの手を押さえて叫ぶ。しかし、その手が振り上げられることは無かった。
「・・・・・・あの時の借りを返す意味でも、あんたのこと引っ叩いても良かったんだけど」
 零れたのは、誰に対する嘲笑か。
「やめるわ。意味無さそうだし」
 それは不安から来るのか。すずかは握ったアリサの手を離すことが出来ない。
「あの時、殴る価値も無い私のことを引っ叩いてくれたのはあんたの優しさだと思うけど、生憎私はあんたほど優しくないの」
 思えば、あれが三人の始まりだった。なのはの優しさと強さが、私に初めての友達を作ってくれた。あの頃は本当に、彼女のことが大っ嫌いで、何とかしてあの子の弱みを握ってやろうと躍起になっていた。でも気が付けば、そんなことはいつの間にか忘れてしまっていた。
 きっと憧れだったんだと思う。自分に無いものを見せ付けられて、それが羨ましくて、でも認めたくなくて。
「それに、・・・もうあの時ほど、お互い幼くないしね」
 そんな彼女の幻影は、そこにはもう無い。
「あんたが放っておいて欲しいって言うなら、私たちはそれを尊重する。もうここには来ない」
「アリサちゃん・・・」
「邪魔したわね。行こ、すずか」
「待って、アリサちゃん。あのね、なのはちゃん。これだけは忘れないで。私たち、なのはちゃんが戻ってくるのちゃんと待ってるから。なのはちゃんは一人じゃない。私やアリサちゃん、はやてちゃんに・・・、フェイトちゃんも。みんななのはちゃんのこと、大好きだからね」
「・・・行くわよ」
 掴んだその手にすずかの力が籠もる。アリサちゃんは私の側からいなくなったりしないよね? そう言われているような気がして、アリサはぎゅっとその手を握り返した。


「悔しいな・・・」
 近くの公園のベンチに腰を下ろして一息。アリサは空を仰ぐ。
「会ってもう六年経つのよ? ・・・それなのに私たち、未だにあの子の本当の友達になれてないなんて・・・」
「・・・・・・」
「正直さ、自信あったんだ。元気の無いなのは励まして、学校に・・・出てこられるように・・・出来るって・・・」
 どうしてだろう、声が、震える。
「・・・・・・でもなのは、こっち・・・向いてくれなかったっ・・・」
 すずかの肩に頭を預けると、静かにその胸に迎え入れてくれた。彼女の慈愛に、抑えていたものが、一気に溢れてきて、暫くその胸の中で震えていた。すずかは何も言わず、ただ優しく頭を撫でてくれていた。
 本当はすずかだって、泣き出したい気持ちだったのかもしれない。でも彼女の優しさに、今は甘えていたかった。
「ねぇ、すずか。なのは大丈夫だよね?このままどこかに行っちゃったりしないよね?」
 視界がぼやけて、すずかの顔がよく見えない。
「信じてあげよう。なのはちゃんの帰ってこられる場所を守って、なのはちゃんが戻ってきたら、お帰り、って言って、ちゃんと迎え入れてあげよう」
 すずかの肩も震えていた。
「・・・うん」
 そっと、すずかの頭を肩に抱く。こうすればお互い顔を見ずに、温もりだけ感じることが出来る。
 そうして二人で気が済むまで寒空の下でわんわん泣いた。二人で寄り添っていても、寒さは和らいではくれなかった。



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Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

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≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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