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リリカルプリキュア 第一話

リリカルなのは と プリキュア が好きすぎて、
結果的にこうなりました。後悔も反省もあるわけない……と今は思ってる。

ちなみにですが、

この作品はパロディです。

この作品はパロディです。
大事なことなので、二回。
色んな言い訳、捕捉はまた次回ということで。


それでは「続きを読む」より

第一話 転校生はプリキュア!? あの娘はいったい何者なの?

です。







 昔から、不思議な夢を見る。

 いつからその夢を見始めたんだろう。
 それがわからないくらい昔から、年に一度か、二度「忘れないで」とアピールするかのように、私の夢の中に現れる少女。
 私は彼女のことを何一つとして知らない。
 それなのに、まるでずっと一緒に過ごしてきたかのような不思議な感覚がある。
 彼女の心を許した笑顔に、そう思わされているだけなのかもしれない。
 夢から覚めた世界でどれだけ探しても彼女は見つけるどころか、手掛かりを得ることさえ出来なかった。
 いつの逢瀬においても、彼女と会話をすることは決して叶わない。
 いつも、同じことのくり返し。
 少女が優しく微笑んで、そっと私の名前を呼ぶ。
 ただ、それだけ。
 違うのは逢わなかった時間の分だけ、彼女が成長していることくらい。
 色のない世界で響くその声は、何よりも甘く美しかったはずなのに、夢から覚めると、彼女の容姿以外の記憶は全て奪い去られてしまう。
 一体あの娘は誰なんだろう。
 どうすれば逢えるのだろう。
 何年か前までは、そのことでモヤモヤしていたけれど、今はもう違う。

 ―――今年も、逢えた。

 現実世界で彼女を見つけられないことの苛立ちよりも、夢の中で逢えなくなることの方が寂しい、と。そんな風に考えるようになっていた。
 逢う度に綺麗になっていく名前も知らない少女に名前を呼ばれると、満たされたような、救われたような、そんな暖かい気持ちになる。
 無理に彼女の正体を知ろうとは思わない。
 願わくは、この逢瀬がこれからもずっと続きますように。
 言葉を紡ぐことを許されない私は、心の中でそっと囁く。

 またきっと逢おうね―――と。




  第一話 転校生はプリキュア!? あの娘はいったい何者なの?



 風に舞い散る花びらを身にまとい、満開の桜を見上げながら一人、通学路を歩く。
 期待に弾む心に、足取りは軽い。
 私、高町なのははこれといって特筆するようなこともない平凡な中学生だ。
 今日から中学二年生。もう何日かすれば中学校生活初めての後輩も出来る。
そんな少しずつ変わっていく環境に心が踊ってしまったり、でもそれを表に出すのも恥ずかしくて何気ないように振る舞ったりするのも、きっと特別なことじゃない。
 それが普通のこと。何事も無い普通の日々の中で、ちょっとした変化にドキドキするのがいい。
 誰かと争ったりいがみあったり。そういうのが無くて穏やかな日常が一番大切なんだって思う。

 そんな私の想いとは裏腹に。
 今日をもってそんなの日常が終わりを迎えるなんて、今の私はまだ知る由もない。

 見るからに高級そうな車が私の横で止まり、後ろのドアが開いて二人の少女が現れる。
「なのはちゃん、おはよう」
「おはよう、なのは」
 清楚でお淑やかな印象を与える少女と、特徴的な金髪とそれ以上に気の強そうな表情が印象的な少女。
「すずかちゃん、アリサちゃんおはよう」
 清楚なのが月村すずかちゃん、金髪がアリサ・バニングスちゃん。どっちもきれいでかわいい。舞い散る桜も彼女たちの周りにあってはより綺麗に見える気がする。
 小学校の頃からずっと仲良し、親友の二人だ。
 二人ともいわゆるお嬢様と呼ばれる類の人で、社会階級的な観点で見ればとても私みたいな庶民とは住んでいる世界が違う。
 きっと中学になってからこの二人と出会っても、きっと気後れから友達にはなれなかったと思う。
 そんな彼女たちと友達でいられたの当時の私の幼さに今ではちょっと感謝していたりする。
 並んで歩いていれば私が一人浮いているという自覚はあるけれど、今はもう気にしてない。
「なのはちゃん、ひょっとしてあの夢見たんじゃない?」
 唐突にすずかちゃんに言われて、私は動揺してしまう。
「えっ、なんで」
「わかるわよ」
「なのはちゃんご機嫌だもの」
 呆れ気味な声を上げるアリサちゃんと、品の良い笑顔を浮かべるすずかちゃん。
「何年アンタと一緒にいると思ってるのよ」
「えっと、アリサちゃん……怒ってる?」
「はぁ!? 何で私が怒るわけ!?」
 ほら、怒ってる…。
 その理由が知りたいんだけど、絶対に答えてくれないことだけはわかって私は次の言葉を見つけられない。
 そんな私たちを見て、すずかちゃんはどうしてかくすくすと笑っている。
「今年も一緒のクラスになれるといいね」
「流石にもう無理じゃない?」
 すずかちゃんの言葉に賛同する間もなく、アリサちゃんが否定の言葉を挟む。
 とはいえアリサちゃんの意見ももっともだ。
 小学校から中学一年まで、私たちはずっと同じクラスだった。
 これにはちょっとした事情があるのだけれど、それももう随分と昔の話。
 きっと、私たち三人の誰もが「一緒のクラスにはなれないだろう」という予感を抱いていた。
 昇降口を抜けてすぐの大掲示板の前には人だかりが出来ている。
 自分はどのクラスになるのか。仲良しの子とまた一緒のクラスになれるのか。気になるあの人とは同じクラスになれるのか。
 色んな想いを抱きながらみんな掲示板の中にある自分の名前を探している。
「私、ちょっと見てくるね」
 そう言ってすずかちゃんは人ごみの中をすり抜けていく。
「もしも…」
 隣にいるアリサちゃんの呟きに振り向くと、顔をこちらに向けないまま続ける。
「もしクラスが別れても、時々お昼くらいは付き合いなさいよね…」
 私が目を丸くしていると、アリサちゃんの横顔がどんどんと紅潮していく。
「うん、ありがとう、アリサちゃん!」
 彼女がぷいと顔を背けると、タイミングを見計らったようにすずかちゃんが戻ってきた。
「やったよ! また同じクラスだよ、なのはちゃん、アリサちゃん!」
 その嬉しそうな笑顔に、思わずつられてしまう。
 アリサちゃんは真っ赤な顔のままで興味無さそうにしてた。
 本当は嬉しいくせに。


   ◇

 始業式も終わり、担任が来るのを待つ教室内は俄にざわついていた。
 窓ぎわ一番後ろの席が一つ空いている。
 それが欠席によるものではないことは50音順に並べられた座席指定表を見て、このクラスの誰もが把握していることだった。
 そのことが示す可能性なんて、一つしかない。
 クラスの担任となった体育教師のリーゼロッテ先生は教室に入るなり、集まってくる視線の質がいつもと違うことの理由に気付いているみたいだった。
「ホームルーム始める前に、あんたたちももう気付いてるだろうけど、転校生を紹介する」
 転校生、という響きに「おぉっ」というどよめきが起こる。
 入ってきて、の呼び掛けに扉が開く。
 その扉の先に立つ新しいクラスメイトを見て、私は息を呑む。
 モノクロだった記憶が一気に彩られていく。
 透き通るような白い肌。
 吸い込まれそうな澄んだ瞳。
 サラサラの黄金の髪。
 夢の中の少女が、そこに立っていた。
「フェイト・テスタロッサです。よろしくお願いします」
 落ち着き払ったよく通る声でそう言って一礼すると、教室内が拍手と歓声に包まれる。
 かわいい、きれい、かっこいい。それらの称賛に彼女は戸惑いながら顔を真っ赤にさせている。
 夢の中の少女に、色彩と、声と、フェイト・テスタロッサという名前が与えられた瞬間だった。


「じゃあ早速席替えすっか!」
 各自自己紹介を終えると早速とばかりに先生は立ちあがる。
「くじ引きの一回勝負、やり直しは一切なし。目が悪い奴は優先的に前の席を選ばせてやるから名乗り出るように。あと、佐藤と鈴木は授業態度の問題から教卓前の席だ。お前らには拒否権も選択権もない!」
 名指しされた二人が悲鳴を上げると、クラスがどっと沸く。
 ロッテ先生はこういう人だ。
 席の前列が固定されると残った席に番号が割り振られ、くじ引きが始まる。
 祈るようにくじの箱に手を入れてじっくり選ぶ人、どこでもいいと興味無さ気にさっと弾いてしまう人、さまざま。
 私はといえば、ちょっとドキドキしている。
 テスタロッサさんの隣にならないかな、なんて。
 さすがにそんなうまい話があるわけないと思いながら引いたくじの番号の先にいたのは。
「……て、テスタロッサさん」
 まさかの夢の人だった。
「高町さん、だよね。よろしく」
 立ち尽くす私に、そう言って微笑む。
「よ、よろしくお願いします!」
 やばい、心臓がばくばくいってる。言葉が、うまく出てこない。
 口だけがぱくぱくと動く私を見て、テスタロッサさんは首を傾げている。
「わ、わからないことあったら、な、何でも聞いてね!」
 明らかに音量を間違えた私に、目を丸くしていたテスタロッサさんは少しして、
「ありがとう、高町さん」
 と、あの夢の中で見せた微笑みを。
 ゆ、夢の中と違う!
 夢の中じゃこんなに緊張なんてしないのに!
 テスタロッサさんは優しそうだから顔には出さないけれど、きっと心の中では笑われているに違いなかった。


 ホームルームでは混乱から抜け出せず、その後に始まった授業でようやく私は少しばかり冷静さを取り戻していた。
 一体私はあの夢の件に関して、彼女にどう切り出すつもりだったのか。
『夢で逢いませんでしたか?』
 見ず知らずの人からそう言われたところを想像してみると、不気味過ぎて背筋が凍る。
 あの時の高揚感のままで行動していたら、残りの学校生活、私は電波な人いうイメージを背負って過ごさなければならなかっただろう。
 授業を終えるチャイムが鳴る。ようやくお昼休みだ、と思う程に今日は時間が長く感じる。
 新しい転校生をと一緒にお昼ごはんを食べようと、こぞってクラスの中でもヒエラルキーが上の女の子達がテスタロッサさんの周りを囲う。
 クラスで可愛いと思っていた女の子達の誰もが、彼女の前では霞んで見える。
 そんな燦然と輝く彼女を見ていると、隣の席なのにとても遠くに感じる。
 住んでいる世界が違う、とはこういうことなんだと思う。
 アリサちゃん、すずかちゃんと出会うのが遅かったらきっと今みたいな気持ちになったんだろう。
 何というかもう、遠目に彼女のことを眺めているだけで十分に思えてきてしまった。
「なのはちゃん、お昼いこう」
 お弁当袋を持ったすずかちゃんの声で我に返る。きっとアリサちゃんにも色々彼女のこと聞かれるんだろうな。
 でも、隣に座る転校生が夢の中の少女と同一人物であることを話すかどうかは正直微妙だった。
「うん」
 こんなことなら、彼女は夢の中の人で居続けてくれた方がよかったのに。
 そう思いながら、私は席を立った。


   ◇

 放課後の掃除を終え、ゴミ箱を抱えてゴミ捨て場へと向かう。
 隣の席になったにもかかわらず、テスタロッサさんとはまるでまともに話せていない。
 休み時間になればすぐに他のクラスメイト達に囲まれてしまって私が入り込む余地なんて……というのは言い訳だってわかってる。
「ふぅ…」
 ゴミ捨て場を出て空を仰ぐと、空の片側が紅く染まり始めていた。
 教室に戻る途中の廊下で「なのは」「なのはちゃん」と呼び止められる。
 一年先輩のクロノ生徒会長とエイミィ副会長だ。
「ちょうどいい、もし時間に余裕があれば今からちょっと手伝ってほしいことがあるんだが」
 この二人とも縁あって、小学校の頃から交流がある。
 今も私のことを気に掛けてくれていて、こうしてよく声を掛けてくれる。
「すみません、今日はもう家に戻らないといけなくて…」
「そうか、残念だ」
「クロノ君はなのはちゃんが大のお気に入りだからねー」
「エイミィ、人聞きの悪い言い方はよせ。彼女の優秀さを考えれば当然の」
 気難しそうなクロノ先輩の不平をはいはいと笑顔で受け流していく技術は凄いなと思う。さすが幼馴染。
「また今度時間が空いた時でいいから顔出してくれると嬉しいな」
 さりげにそうやってフォローを入れてくれるところも流石だ。


 帰宅するか部活動に行くかで、きっともう誰も残っていないだろうと思っていたのに、教室には一つの影があった。
「て、テスタロッサさん…」
 心臓が跳ねる。
 西日に照らされた、姿勢良く自分の席に座るその姿は神々しいくらいに綺麗。
「高町さん、いま帰り?」
 ひょっとして私のことを待っていてくれたのだろうか。いや、そんなわけはない。きっと他の誰かを待っているに決まってる。テスタロッサさんのことだ。もう友達の一人や二人くらい出来ているはずなんだから。
「うん。て、テスタロッサさんは誰かを待ってるの?」
「うん。高町さんのことを」
「ふぁっ!?」
 思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「ご、ごめん。私急いで帰らないといけないから……それじゃ!」
 焦って自分の荷物を手に取り、逃げるように教室を出ると、後ろから追いかけてくる足音。
「待って、高町さん!」
「……な、なんですか?」
 呼び止められて、恐る恐る振り返る。
 その表情は責めているわけではなく、ただ私の奇行に困惑しているみたいだった。
「私、貴女に何かした?」
 私は思いきり首を横に振る。
「じゃあどうして私のこと避けるの?」
「そ、そんなこと…」
「あるよね」
 彼女を納得させる何かしらの理由を挙げなければ、この場から去ることは許されない。そんな迫力が彼女にはあった。
「て、テスタロッサさんは、その……すごく、綺麗で、可愛いし……その……だから、私なんかといてもしょうがないかなって」
 心にも無いことが、するすると口をついて出た。
「……何それ」
「えっ」
 でもそんな嘘が、私の本心となって彼女に伝わった。
「私、一言でもそんなこと言った?」
 テスタロッサさんの声にこめられた感情に、私は慌てる。でも弁明しようにももう手遅れだった。
「貴女が私と話したくない、ってそういうことでしょ? それを私のせいにしないでくれる?」
「わ、わたし……そんなつもりじゃ…」
「もういい」
 嘘を訂正する術はもはや無く、彼女は私の傍を通り抜けていく。
 その去り際、彼女は聞こえるかどうかくらいの声でぼそりと呟いた。
「貴女に、プリキュアは務まらない」
「……えっ?」
 しばし呆けて我に返る頃には、もうテスタロッサさんの姿は無かった。


   ◇

「今日ね、私のクラスに転校生が来たの。外国の娘でね、髪がすっごくきれいな金色で、とってもかわいいの!」
 夕飯を囲む食卓はいつものように賑やかだ。
 私が他の子と少しだけ違うことがあるとすれば、父母がいないこと、それが理由でこの施設『ロングアーチ』で暮らしていることだ。
「言葉は?」
「普通に話せるの! スゴイよね」
 ここには私を含め、それぞれに事情を抱えた7人の子どもたちが暮らしている。
「お友達になったの?」
「もう凄い人気で、今日はあまりお話しするチャンスなかったの、お友達になれるといいね」
 その中で最年長である私は、学校にいるときよりも周りに意識的に明るく振る舞っている。
「友達になって、ここ連れてきてよ!」
「こら。中学生にもなるとみんな忙しいの。無理言っちゃいけません」
 はしゃぐスバルを保育士のアイナさんがたしなめる。アイナさんは私たちのお母さんみたいな存在だ。
「なのは姉はすぐ帰ってくるじゃん!」
「それはあなたたちがいたずらばかりして、私たちの手を焼かせるからです。みんななのはちゃんに感謝しなきゃいけないんですよ」
 子供たちがしゅんとなってしまう。
 隣の席だ、とは言えないまま夕食の時間は終わってしまった。


『プリキュア オープンマイハート!』
「きゃっきゃっ」
 施設で一番幼いのが、私の腕の中ではしゃぐこのヴィヴィオだ。
 この子はどうしてか私のことを母親と勘違いしていて、正直なところ困惑している。
 まだ言葉もおぼつかない幼子相手にそれを否定するわけにもいかず、現状に甘んじてしまっている。
 ヴィヴィオはプリキュアが大好きで、中でもハートキャッチプリキュアがお気に入りなようだ。今もこうして一緒にDVDを鑑賞中。
『プリキュア! ピンクフォルテウェイブ!!』
「あ、ブロッサムの声、ちょっとテスタロッサさんに似てる…」
 テスタロッサさん、プリキュア好きなのかな。
 私たちが小さい頃から放送してたから、可能性としてなくはない。
 彼女の可愛らしい一面を垣間見たような気がして、ちょっとだけ吹き出してしまった。
「……ヴィヴィオ?」
 どうやら私が考え事をしている間に眠ってしまったらしい。
 テレビとDVDの電源を切って、ヴィヴィオをベッドに移して電気を消す。
 窓から外を眺めると、いつもより星が綺麗に見える。
 この施設で振る舞うみたいに接することが出来ていたらテスタロッサさんとも仲良くなれていたのかな、なんて空を見上げながらぼんやりと考える。施設と学校で違う自分への違和感、それを知りながらどうすることも出来ないことがもどかしい。
 明日から隣の席の彼女とどう接していったらいいのか悩んでいると、空で何かが動いた。
「ながれ……ぼし?」
 そう呼ぶには幾つかの違和感があった。
 それが紅い光を帯びていたこと。この付近に落下したように見えたこと。
 何よりの違和感は、たくさんの建築物があるにもかかわらず、それらを透かしたみたいにその星の軌道がはっきりと目に見えたことだった。
 ……探しに行かなきゃ。
 理由の無い使命感に背中を押されて、私は門限をとうに過ぎた施設から飛び出していた。


 直感に導かれるまま、私は近くの公園へと辿り着く。この町では一番大きい公園で、自然も多い。
 息を切らせながら私は辺りを見渡す。夜の公園に人影はなく、風の音だけが響いて少し気味が悪い。
 引き返すわけにもいかず、普段なら絶対に足を踏み入れることのない闇深い林へと向かう。その先だ、勘がそう言っている気がする。
 林の中に外灯は少なく、足下もおぼつかない。懐中電灯でも持ってくればよかったと後悔しながらゆっくりと歩を進めていると、
「はわわわわわっ!」
 何かに足をすくわれてどちん、と尻餅をついてしまう。
「いったぁ…」
 お尻をさすりながら足下を見渡すと、今私が踏んだらしい『何か』が転がっている。
「宝石……な、わけないか」
 手に取ってみるとまんまるの紅い玉だった。近所の子どもが落としたおもちゃだろうか。
 それをどうしようかと眺めていると、傍らで茂みがうっすらと光っていることに気付く。草をかき分けるとそこには…。
「ち、ちっちゃい…」
 小人とでも言うのだろうか。人間のようで明らかにそのサイズが人ではないものが横たわっていた。よく見ると背中に四枚の透けた羽がある。
 体全体を包み込むように優しい光を放っていて、その光は人工的なものではなく、確かな生命が感じられた。
「ねぇ、大丈夫? ねぇ!」
 両手ですくい上げると、その子の体温が感じられた。これっていわゆる妖精さんってやつだよね。
 ……夢でも見てるのかな。
 私の声に反応したのか、小さく呻いてから目を覚まし、辺りをきょろきょろと見回している。
「よかった…。えっと、大丈夫?」
 声に驚いたその子は、私を見上げながらきょとんとした表情をしている。
「貴女……私のことが見えるの?」
 妖精さんの言っていることの意味がわからず首を傾げていると、背中を撫でるように悪寒がはしる。
「見つけたわよん」
 女の人の声に驚いて振り返ると、人が宙に浮いていた。距離と暗さで容姿まではわからなかったけれど、声がそこから発せられていることは疑いようが無かった。
「ごめんなさいね。その子、私たちの大事なものを盗んだ悪い子なの。こっちに渡してもらえる?」
 その物言いに、怜悧と言うよりかは底意地の悪くてずる賢そうな印象をもった。
 手のひらの中の妖精さんに視線を向けると、必至に首を横に振っている。
 どちらが嘘を吐いているのかなんて、考えるまでもなかった。
「……っていうか、貴女。何でその子が見えるわけ?」
 この子もあの人も、さっきから何を言っているんだろう。
「まぁいいわ。貴女たちまとめて連れ帰ればドクターが何とかしてくれるでしょ」
 それを問う暇も考える余裕も無く、事態は進んでいく。
 危険が、近付いてくる。
 逃げなくちゃ。そう思うのに、体が動かない。
 彼女が眼鏡を掛けていることがわかるくらいに近付かれた時、私たちの間を裂くように黄金の光の矢が三本、地面に突き刺さる。
「誰っ!?」
 眼鏡の人同様、矢の飛んできた方に目を向けると、何かが高速で近付いてくる。
「はぁぁぁぁっ!!」
 それは瞬く間に目の前に現れ、その攻撃を避けるために眼鏡の人は私たちから距離を置く。
「フェイト!!」
 その背中に向けて、妖精さんが叫ぶ。
 聞き間違いじゃなければ、この子は確かに「フェイト」と言った。
「大丈夫、リンディ? って貴女は……!?」
 私に気付いた瞬間の、彼女が見せた動揺。
「テスタロッサさん……なの?」
「ち、違う! 私は……、キュアライトニング!」
「キュア……って、プリキュア!? テスタロッサさん、プリキュアなの!?」
 確かにその衣装は現実離れしていて、プリキュアと言われれば、そう見えなくもない。
「だからっ! 私はテスタロッサじゃないし、貴女のことも知らないんだってば!!」
「何をごちゃごちゃと!」
 私たちの言い合いに業を煮やしたか、眼鏡の人が叫ぶ。
「いでよっ、オマエラー!!」
手にした何かを天に掲げると禍々しい青い光を放ち始め、巨大な黒い影が現れる。
「コポォ…」
人の形を模して私たちの前に立ったそれは、林の木々を超える大きさの化物だった。
「やっておしまい!」
「キンパツビショウジョモエー」
化物がこちらに向かってくるのと同時に、テスタロッサさん似のプリキュアもまた相手に向かっていく。
「テスタロッサさん危ない!」
「遅い!」
 あんな化物相手に無茶だ、と言う間も無く、彼女は相手の攻撃をかわして土手っ腹に蹴りを入れると、化物は軽々と吹き飛ばされてしまう。
「……すごい」
 私はテレビを見ているような錯覚に陥る。
 日曜朝8時半からの光景が、そこにあった。
「なにやってんの、しっかりしなさい!」
「モット、モットノノシッテ...」
 眼鏡の人に足蹴にされて黒の化物はハァハァ言っている。
「クアットロ!」
「あら、どこかで逢ったかしら?」
「母さんを…、母さんを返せっ!!」
 クアットロと呼ばれたお姉さんは怪訝そうな表情をした後「あぁ…」と何かに思い至ったようだった。
「あいつの子どもなのね。それで何? 貴女プリキュアなんてやってるの?」
「黙れっ!!」
 いつの間にか、化物の姿が無い。
「危ないっ!」
 クアットロが注意を逸らしている間に背後に回り込んだ化物が攻撃を仕掛ける。
 しかし突きだした拳は相手を捉えることはなく、プリキュアはその腕を掴んで豪快に背負い投げ、地面へと叩き付ける。
「今よ、フェイト!」
「フェイトじゃないっ!!」
 妖精さんの叫びを否定しながら、テスタロッサさんに似た人が右手を前にかざすと、光の刃を携えた斧が現れる。
「プリキュア! ライトニングセイバー!!」
 彼女がそれを手に取って一閃すると、黄金の光刃が化物へ向かって飛んで行く。
「キマシタワー!!」
 直撃を受けた化物はその姿を消し、荒らされた周囲の林も元の姿へと戻る。
「くっ…、おぼえてらっしゃい!!」
 捨て台詞と共にクアットロもまた闇に姿を消した。
「大丈夫だった?」
 近付いてきたその姿は、少し雰囲気も見た目も違うけれど、やっぱり彼女に良く似ていた。
「ねぇ、やっぱり貴女、テスタロッサさんだよね。これっていったい…。それにこの子は…」
「君…、その子が見えるんだね…」
「えっ」
 まただ。今日三回目の違和感。
「認めない…」
「……テスタロッサさん?」
 戸惑う私に、彼女はキッと睨み付けながら言う。
「私は認めない! 貴女がプリキュアだなんて!!」

「…………えっ」


(つづくの!)




  次回予告

 妖精さんに、空飛ぶお姉さんに、変身するテスタロッサさん、もう何が何だかわかんない!
 って、えぇっ!? わ、私もプリキュアなの!?

 次回リリカルプリキュア!
「私がプリキュア!? そんなのムリなの!!」

 リリカルマジカル、がんばります!



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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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プロフィール

高町屋

Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

↓↓↓リリカルなのはの二次創作、同人活動をしている方、マイミク/マイピク募集中です。お気軽にどうぞ♪mixi pixiv Dolce

≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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リリカルプリキュア(2)


【長編】魔法少女リリカルなのはNightmare(59)
  第十三話
  第十二話
  第十一話
  第十話
  第九話
  第八話
  第七話
  第六話
  第五話
  第四話
  第三話
  第二話
  第一話

SS(7)
  ぷろぽーず ぱにっく!⑦
  ぷろぽーず ぱにっく!⑥
  ぷろぽーず ぱにっく!⑤
  ぷろぽーず ぱにっく!④
  ぷろぽーず ぱにっく!③
  ぷろぽーず ぱにっく!②
  ぷろぽーず ぱにっく!①
(ViVidとForceの間?/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  きねんび(後編)
  きねんび(前編)
(A's/なのは、フェイト)
  じぇらしー
(ちゅーなの/なのは、フェイト)
  わたしのままとまま
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  わがまま
(A's/なのは、フェイト)
  ぱぱ?
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ、機動六課)

漫画(22)
  勉強会⑦+⑧
  勉強会⑥
  勉強会⑤
  勉強会④
  勉強会③
  勉強会②
  勉強会①
  わがまま
  今は反省している。
  休日の過ごし方②
  休日の過ごし方
  戦場では一瞬の判断の遅れが死を招くんだ!
  共働きの核家族でありがちな風景
  間接キス⑤+⑥
  間接キス④
  間接キス③
  間接キス②
  2時間15分59秒。
  たしなみ
  虫刺され?
  またふーふー
  ふーふー

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