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リリカルプリキュア 第六話

五話が三日前の更新なので、そちらからどうぞ。

それでは「続きを読む」より

第六話 えっ!? プリキュアも特訓するの!?

です。



 気が付くと、どこかの森の中に立っていた。
 どこか見覚えのある景色。・・・・・・嫌な予感がする。
 いやそんなことあるわけがないと、必死に周囲を確認する。
 しかし無情にも、今考え得る最悪の可能性が実現してしまう。
 遥か前方にいる二人の仮面剣士の姿に気付き、心臓が跳ねる。
 そして何故か隣には、今までいなかったはずのキュアライトニングが。
 混乱する私のことなどお構いなしに、状況は進んでいく。
「この三日間、待ちわびたぞ・・・」
 その言葉に、私は愕然とする。
 うそ・・・。もうそんなに経ったの!?
 だって私たち、まだ何も出来てないのに・・・。
 困惑する私を待ってくれるはずもなく、彼等は一歩ずつ、ゆっくりとこちらへと向かってくる。
 絶望が、近付いてくる。
 脚が震える。そんな姿、敵に見せちゃいけないのに、身体が言うことを聞いてくれない。
 隣にいるライトニングを見る。
 怖じ気づくこともなく、真っ直ぐに敵を見据える彼女。
 ライトニングは…、フェイトちゃんは・・・・・・強い。
 どうして、こんな状況でも気持ちを保っていられるのだろう。
 私の不安を知ったのか、ライトニングが私の手を握る。
「いくよ・・・、ステラ」
 やめよう、今の私たちじゃ、どうやったって敵いっこないよ。
 そう言いたいのに、声が出ない。
 そして、ライトニングが地面を蹴る瞬間を私は見送ってしまった。
 一緒に敵に立ち向かおう、というパートナーの思いを裏切ってしまったんだ。
 その刹那のライトニングの「えっ・・・」という、失望でも怒りでもない、ただ純粋な驚きの表情が私の脳裏に焼き付く。
 時間にしてコンマ数秒の出来事ではあったものの、出だしを躓いていてはコンビネーションとして既に崩壊している。
 直ぐにライトニングのフォローに向かうものの、私たちが相手に力でねじ伏せられるのに、さして時間は掛からなかった。
 大技を出すことすらも叶わないまま圧倒され、変身を解かれた私たちは地面に倒れ伏せる。
「貴様らには失望した・・・」
 二人の仮面剣士はフェイトちゃんを見おろしている。
「なのはっ・・・、逃げてっ・・・!」
「フェイト・・・・・・ちゃん・・・」
 二人は小太刀を構え、一思いに振り下ろす。
 私は彼女の名前を絶叫した。
 ・・・・・・しかし、その絶望の瞬間を目にすることはなかった。
 日中の屋外にいたにもかかわらず、何故か突然世界が暗転したのだ。
「フェイトちゃん?」
 声は闇に溶けて消える。
 前後左右どころか、自分が立っているのか座っているのかもわからない。
 まるで自分の存在が無くなってしまったみたいだ。
 それからどれくらい時間が経ったのか。
 やがて、視界がぼんやりとした灯りを捕える。あれは・・・・・・火の灯りだ。
 そしてその火は次第に勢いを増していく。
 何があったのかも忘れ、私はそれを、ただぼんやりと眺めていた。
 火の爆ぜる音に我に返り、炎に包まれているものの正体を知る。
「っ!? そんなっ・・・!」
 燃えていたのは、ロングアーチだった。
 慌てて、もつれる足で家の中へと飛びこむ。
 必死にみんなの名前を叫ぶものの、誰も返事をしてくれない。
 みんな非難していないだけなのか、それとも・・・。
 頭を過ぎる不安を振り切って炎の中を進み、広間へと辿り着く。
「みんな・・・っ!」
 そこには、妹たちや施設の職員さんたちが倒れていた。
「・・・・・・姉さん?」
 私の声にみんな意識を取り戻したようで、無事でいてくれたことに一先ず安心する。
「すぐに助けるから・・・・・・っ!?」
 駆け寄ろうと一歩を踏み出したところで、上からけたたましい音が響き、炎に包まれた天井が崩れ落ちる。
 悲鳴を上げることすら叶わず、落ちた天井が家族を呑み込もうかという、その瞬間。
 再び、暗黒へと放り込まれる。

 夢から覚めるような感覚。
 でも、何となくわかる。ここは・・・・・・現実じゃない。
 不思議なことに、意識ははっきりあるのに、身体はふわふわと宙を漂っているようで自由がまるで利かない。
 ひょっとしたらこれが明晰夢なのかもしれない。
『・・・・・・これが、二日後の貴女の未来』
 不意に、知らない声が響く。
「誰?」
 応えはなかったけれど、私にはちょっとした予感があった。
「・・・・・・ひょっとして、プリキュアさん・・・・・・ですか?」
 リンディが、伝説の戦士は英霊をその身に宿す、と言っていた記憶がある。
 そうであって欲しい、という願望もあったのかもしれない。
 しかし、それにも答えは返ってこなかった。
『今の貴女では何も守れない。大切な人たちどころか、貴女自身さえも』
 会話は成り立たず、あちらからの声画だけが一方的に響く。
『貴女には戦士としての自覚が足りない』
 完敗どころか惨敗だったあの戦いを振り返れば、返す言葉もない。
『私たちに敗北は許されないのです』
 闇が晴れ、見知らぬ地に立たされる。
 開けただだっ広い空間には多くの人の姿があった。
 陽もあたらない薄暗い洞窟の中で、人々が肉体労働を続けている。
『スカリエッティは人々を捕え、欲望を吸い取り続け、抜け殻になった人々を労働力として使役し続けています』
 人々の目は暗く淀んでいて、生気がまるで感じられない。
「ひどい・・・。こんなの、奴隷じゃないですか!」
『これが先代の、貴方たちの母の敗北が招いた悲劇です』
 私が息を呑むのと同時に、景色が闇へと戻される。
『プリキュアは幾度となく勝利と敗北を繰り返してきた。救えた世界もあれば、目の前で滅ぼされた世界もある』
 まるで走馬燈のように、それらの歴史が流れていく。
 ・・・・・・違う。こんなの違う。
 私が知ってるプリキュアは、強くてどんなピンチにも必ず立ちあがって最後にはちゃんとウルトラなハッピーエンドを迎えるはずなのに。
 今のままじゃ、あんな未来が待ってるっていうの?
 絶望に、心が打ちひしがれる。
『強くなるのです、キュアステラ。プリキュアとして・・・。人として・・・』
 そう言われたところで、どうすればいいのかがわからない。
『信じなさい。プリキュアの力を、貴女の大切なパートナーを、そして貴女自身を・・・』
 闇の世界に幾筋もの光が差し始める。
 目覚めが近いのだとわかり、私は焦る。
「待ってっ! 私、まだ聞きたいことが・・・」
 闇から解き放たれたそこは、見慣れた自分の部屋だった。
 慌てて携帯を開いて日付を確認する。
 今日を含めてまだ三日あることに安堵し、私は荷造りを始めた。

 音を立てないように静かに玄関の扉を開き、そっと外に出る。
 空気は少しひんやりとしていて、肌に心地良い。
 まだ日は昇っていないけど、空はもう随分と明るかった。
 一度深呼吸してから、振り返る。
 私がずっと過ごしてきた我が家。
 大切な家族たちとの想い出が詰まった、大切な場所。
 ふと浮かんだ夢での光景を、頭を振って追い払う。
「姉さん」
 パジャマ姿の妹が、サンダルをつっかけて出てきた。
「おはよう、ギンガ」
「起きて大丈夫なの? それにその荷物・・・」
「ごめんギンガ。手紙にも残したけど、何日か出掛けてくる」
「えっ」
 何をどうすればいいかなんて全然わからないけれど、このままじゃいけないってことだけはわかる。
 今はとにかく、フェイトちゃんの所へ行こうと思う。
「みんなには迷惑かけちゃうけど」
「大丈夫」
 私に最後まで言わせまいと、ギンガが遮る。
「いつも言ってるでしょ、姉さんは少しわがままを言うくらいでちょうどいいって」
 さすがに今回のはいきなり過ぎたけどね、とギンガが笑う。
「みんなには私が説明する。でもみんな、心配はすると思う。だから・・・」
 私の手を取るギンガ。
「ちゃんと無事に帰ってきて。これだけは、絶対に約束して」
 昨日あんなことがあったからなのか、それとも別の何かを感じ取っていたのか、それはわからないけれど、その表情はいつにも増して痛切だった。
 いつもギンガには心配を掛けてばかりだ。
「・・・・・・うん。わかったよギンガ。約束する」
 ギンガはそれ以上何も聞かずに私を送り出してくれた。

 もう一度だけ振り返って、我が家を視界に収める。
 これを見納めなんかにしない。
 また、家族の待つここに帰ってくるんだ。
「リンディ、お願い」

 あんな未来、私は絶対に認めない。




  第六話 えっ!? プリキュアも特訓するの!?


 知り合いの所に行く、と言うフェイトちゃんに連れられて、私はどこかの山間の中腹を歩いている。
 私を庇ってくれたフェイトちゃんも、それほど深刻なダメージは残らなかったようで前を歩く足取りも軽い。
 普通なら入院していてもおかしくないくらいなのに、改めてプリキュアの回復力は凄まじいなと思う。
「ここ、足下気を付けて」
 生い茂る植物の見た目や、時々目に入る昆虫のような小さい生物からして、私のいる世界ではないことは何となく想像がつく。
 途中の山肌から麓を見下ろしてみたものの、一面に大自然が広がるばかりで、文明らしきものの気配はまるで感じられない。
 こんなところに本当に誰か住んでいるのだろうか。
「あ、いたいた。なのは、着いたよ」
 私は最初から勘違いしていたらしい。
 そこにいたのは、人ではなかった。
「久しぶり、アルフ」
「お、狼・・・?」
 驚いてフェイトちゃんの後ろに隠れる。
 赤毛の狼なんて見たこともないけれど、こちらの危機感を煽る獰猛そうな見た目はどの世界でも変わらないみたいだ。
「おう、来たね」
「喋った!?」
 それどころか、瞬く間にその姿が狼から人へと変わる。
 変身したこともそうだけど、女の子であること、そして歳も私たちとそんなに変わらなさそうな見た目であること、驚きが多すぎて言葉が出てこない。
「あたしはアルフ。あんただね。フェイトの相棒は」
 気が強そうな瞳に見下ろされて、ちょっとどぎまぎしてしまう。
「高町・・・・・・なのはです」
「・・・・・・ふぅん」
 舐めるような視線に、獲物として見定められているんじゃないかと気が気じゃない。
「大丈夫だよ、食べたりしないから」
 そう言って笑うフェイト。
「せめて『噛む』って言っておくれよ」
 アルフさんは苦笑している。
「さて・・・、時間もないみたいだし、早速始めるか」
「えっ!?」
 着いたばかりで、戦闘準備を促される。
「なんだい?」
「な、何でもないです」
 せめて荷物くらい置きに行かせてよ、と言い出すことも出来ず、流されるままに変身する。
 え・・・? これ本当に始まるの?
 おろおろしながらアルフさんとライトニングを見ると、二人の表情は真剣そのもので、突然の雰囲気に順応することが出来ない。
「うん、だいたいわかった」
 アルフさんがそう言うと、ライトニングから緊張が抜ける。
 一体この一瞬で二人の間でどんなやりとりがあったというのか。
「どっちも問題はあるけど、特に・・・」
 アルフさんに伸ばした人差し指を突き付けられる。
「お前が酷い」
 それは確かに事実だと思う。
 でも、フェイトちゃんやリンディ達に言われるならまだいいけれど、会ったばかりの人に変身した姿を見られただけで、そこまで言われる筋合いも無いんじゃないかと思う。
「お前には、戦士としての自覚と覚悟が足りない」
 言い返そうかというところで、その言葉を浴びせられて、私は息を呑む。
 今朝、同じようなことを言われたばかりだ。
「何かいいたいことでもあるかい?」
 何も答えない私に、ふん、と鼻を鳴らす。
「まぁすぐにわかるだろうよ」
 ・・・・・・何だかずいぶんと感じの悪い人だ。
「あっちに小屋がある。お前、フェイトの分もまとめて荷物置いてこい。私はちょっとフェイトと話がある。ここにいるからすぐ戻ってきな」
 返事をせず、当てつけっぽく「ちょっと行ってくるね、フェイトちゃん」と言い残し、二人分の荷物を持って指差された方へと向かう。
 荷物を両手に持ってパシられるプリキュアとか、ちょっと惨めすぎる。
 ほどなくして言われた山小屋が見つかる。
 老朽化が目につく外観とは裏腹に、中は意外と小綺麗。
 一通り最低限の日用品は揃っているけれど、生活感はまるで感じられない。
 きっと来客用で、普段を狼姿で過ごすアルフさんもここを使うことはないのだろう。
 それでも掃除は行き届いていて、ほこり一つ落ちていない。
 ベッドに敷かれた真新しいシーツ。ひょっとしたらフェイトちゃんが来るのを内心楽しみにしていたのかもしれない。
 そう考えると思っている程悪い人ではないのかも知れないと思い、私は荷物を置いて、さっきの場所へと戻る。

「ちょっ・・・、これ、どういうことですかっ!?」
 ・・・・・・やっぱり、アルフは悪い人かもしれない。
 理由はわからないけれど、光のリングに両手足を拘束されたキュアライトニングが張り付けにされて宙に浮いている。
「うるさい、黙って聞きな」
 そう凄まれて、私は敵意を持って睨み返す。
「今から私は敵だ。私は全力でキュアライトニングを襲う。お前は相棒を守れ」
「何ですかそれっ!」
「反論も質問も一切受けない! 始めるよ!」
 アルフがライトニングに向かって距離を詰め、振り上げた拳を一気に突き出す。
 一瞬反応が遅れたものの、何とかその間に割って入り、両手でアルフの拳を受け止める。
「一体どういうつもりですかっ!」
 アルフは何も答えず次々と拳を繰り出してくる。
 反撃に出たいのに、思っていた以上の相手の速さと手数の多さで防戦一方になってしまう。
 すると背後に浮いているライトニングがゆっくりと移動を始める。
 ますますライトニングへの注意を払わなければいけなくなり、このままではいつまで集中力が保つのかわからない。
 ライトニングを背にしている限り手出しなんかさせないけど、このままじゃまずい。
 ふと、名案を閃く。
『リンディ、レティ! お願い、今のうちにライトニングを助けて!』
 こんな目的もわからない世迷い言にいつまでも付き合う義理はない。
 しかし何度も呼び掛けるも、妖精達からの返事がない。
「あんたは馬鹿なのかい? ライトニングを捕えて、あの二人をそのままにしておくと思うのかい?」
 少しずつ捌ききれなくなった拳が私を捉え始める。
「気に食わないねぇ。抜け道を探そうっていうその態度・・・」
「・・・・・・何を! ライトニングを守れって言ったのはそっちでしょ!」
「さて、そのライトニングは一体どこに行っちまったのかねぇ」
「っ!?」
 振り返るとライトニングの姿が無い。
「もらったっ!」
 その隙を突かれアルフはその場から離れる。その視線の先にライトニングの姿があった。
 急いでその後を追いかけるものの、ただ追いかけるだけではもはやその距離は埋められない。
「ステラシュートっ!!」
 光弾で追撃して進路を妨げ、何とかライトニングの前に立つ。
「まだまだっ!」
 アルフは不敵な笑みを浮かべてまた明後日の方向へと向かう。
 ハッとして振り返ると、やはりそこにライトニングの姿は無い。
 そこでようやく、ライトニングが空間転位をさせられていることに気付く。
 状況は完全に『守る』から『敵を追いかける』へと変わる。
「さっきまでの威勢はどうしたんだい?」
「くっ!」
 徐々に、追いつけなくなっていく。
 動き出しが遅れることを始め、こちらの進路妨害も、避けるかその拳を持って跳ね飛ばされて、もはや意味を為していない。
 もはや完全に劣勢に立たされていた。
 ギリギリのところで弾いた攻撃がライトニングを掠り始め、次第にその攻撃への接触も浅くなり、ついには完全なる直撃を許してしまう。
「もらったぁっ!!」
 吹き飛ばされた勢いで森の木々がなぎ倒されていく。手足を拘束されているために受け身を取ることもままならない。
「ライトニングっ!!」
 助けなければ、と巻き起こる砂煙の中に向かう途中、何故か敵とすれ違う。
「どこを見てるんだいっ!!」
 辿り着いた先にいるはずの彼女の姿が、ない。
「うぉらぁぁぁぁっ!!」
 敵の雄叫びに振り返ると、正にその拳がライトニングを抉る瞬間だった。
「やめてぇぇぇぇぇっ!!」
 再び弾け飛ぶライトニングに、私は悲鳴を上げていた。
 もはや為す術の無い私は、躍動するアルフに追いつけないまま右往左往するばかりで、無慈悲な暴力に晒され続けるパートナーを目で追うことしか出来なかった。
 追いかけなければ、と踏み出した足がもつれ、跪く。そして間を置かずに拳が振るわれる鈍い音が耳に響く。
「あ・・・、あ・・・」
 辺りの木々は、その殆どが吹き飛ばされたライトニングによってへし折られ、来た頃とは景色が変わってしまっている。
 どうしようもない無力感と自分への怒り。
 心の中にある「何か」が少しずつ削れていく感覚。
「立て!! 時間がないっつってんだろうが!!」
 顔を上げると、アルフが侮蔑の視線でこちらを見下ろしている。
「・・・・・・もう・・・、もうやめてっ・・・!」
「あぁん?」
 私は声の限りに叫ぶ。
「お願いだからっ! もうやめてよぉっ!」
 このままじゃ・・・、フェイトちゃんが・・・、フェイトちゃんが・・・。
「あまったれんな!! それで敵がやめてくれるとでも思ってんのか!?」
「・・・・・・何で、何でそんな酷いことができるんですかっ!」
「馬鹿か! お前がマヌケなこと叫んでる間にっ! フェイトは殺されちまうよ!!」
 見せ付けるようにまた思い切り殴り飛ばされるライトニング。
「お前はそれでもいいのかよっ!!」
 不意に、自分の中で何かの「たが」が外れる気がした。
「ぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ・・・・・・それから先のことは、よく覚えていない。


  ◇

 また、あの夢を見ていた。
 現れた二人の仮面剣士を前に結局何も出来ないまま、私の目の前でライトニングが・・・。
「フェイトちゃん!!」
 叫びながら起き上がると、どこか見覚えのある部屋の中。・・・・・・そうだ、あの山小屋だ。
「大丈夫、なのは?」
「フェイトちゃん!?」
 声に驚いて振り向くとそこには、傷一つ負っていないフェイトちゃんが立っていた。
「だ、大丈夫なの!?」
「う、うん・・・。アルフ、ちゃんと手加減してくれてたから」
「フェイトちゃん!!」
 彼女の胸に飛びこんで号泣してしまう。
 泣きたいのは彼女の方だろうに。
「ごめん、ごめんね。私が弱いせいで・・・」
「ううん、なのはは頑張ったよ」
 そこからはもう言葉にならなくて、わんわん泣いた。
 フェイトちゃんは優しく私の頭を撫でてくれていた。
「ご飯、食べられそう?」
 枯れる程泣いて、たまっていたものを全て吐き出したら空っぽのお腹だけが残ったみたいで、ぐぅ、と一鳴き。
 もう目の周りも真っ赤だし、今更恥ずかしいことなんてない。
 フェイトちゃんが用意してくれたという晩ご飯を二人で食べる。
「アルフさんは?」
 わからない、とフェイトちゃんは首を横に振る。
「あたしがいるとゆっくり休めないだろう、ってどこかに行っちゃった・・・。朝には戻ってくるって」
 妖精達も彼女と一緒にいるらしい。
「・・・・・・そっか」
 フェイトちゃんはほとんど料理が出来ない。きっとこのご飯はアルフさんが作ったものだ。
 アルフさんが作ったと知ると私が食べないんじゃないかと心配してくれたのだろう。
 きっと・・・・・・悪い人じゃない。でも・・・。
 いや、やめよう。
 今はただ、目の前にある食べ物に感謝を。

「明日も早いし、もう寝ようか」
 二人でお風呂からあがって髪を乾かし終えると、フェイトちゃんが寝袋を手に取る。
 それを見て、彼女の服の袖をきゅっと掴む。
「なのは?」
「・・・・・・いっしょに・・・・・・寝よう?」
 言いながら真っ赤になっているのがわかる。
 まったく、中学生にもなって何を言っているのか。
 馬鹿にされるかと思ったけれど、フェイトちゃんはただ一言「うん」とだけ応えた。
 部屋の灯りが消える。
 軽くベッドが軋み、彼女の身体がシーツを撫でる音がして、そっとフェイトちゃんは私の隣に寄り添ってくれた。
 じっと彼女の顔を眺めながら、闇夜のありがたさを知る。
 だって、どんなにはずかしくてもそれが相手に知れることはないのだから。
 ふと、フェイトちゃんが呟く。
「・・・・・・こうやってなのはと一緒に寝るの、小さい頃からの夢だったんだ」
「・・・・・・うん、私も」
 一瞬の、沈黙。
「「えっ?」」
 どうして今、会話が成り立ったんだろう。
 理解が、追い付かない。
「ねぇ、なのは。今から私が言うこと、笑わないで聞いてくれる?」
 頷きながら、心臓は高鳴っている。
「・・・・・・私ね、本当は小さい頃から、なのはのこと、知ってたんだ」
 ―――そんな素敵なことってあるだろうか。
 嬉しくて、今まで言えずにいた自分が馬鹿らしくて、思わず笑みがこぼれる。
「あぁっ、笑ったぁ!!」
「ううん、違うの。・・・・・・フェイトちゃんもかぁ、って思ったの」
「・・・・・・えっ?」
 その言葉の意味を知り、フェイトちゃんも笑顔になる。
 名前も知らなかった夢の中のお姫様と、今こうして同じベッドの上にいることが嘘みたい。
「でもまさかその人がプリキュアだなんて、思ってもいなかったけどね」
「それは私もだよー」
 そして、こうして一緒に戦うことになるなんて。
「最初はお互いの印象、あまり良くなかったよね」
「ごめん」
「それはお互い様。でも今は・・・、想像通りだったなって、思う」
「・・・・・・うん、そうだね」
 話したいことが、たくさんたくさんある。
 でも何から話したらいいのかを決められない。
「いけない、もう休もう」
「駄目だー、全然話し足りないよー」
 夢で貴女と会えたことがどれほど私を救ってくれたことか。
 溢れてくる想いに、言葉が追い付かないだろうけど、それでも伝えたいことがある。
「大丈夫だよ」
 そう言って、フェイトちゃんは微笑む。
「夢の中でも逢えるんだから」
「・・・・・・うん」
 夢の中でも逢えますように。
 そう願いながら、私たちは手を繋いで目を閉じた。


  ◇

「よし、じゃあ今日も始めっか。今日で何とか出来なきゃヤバイからな。・・・ん、どうしたフェイト?」
 翌日、私たちが起きる頃にはもうアルフたちは外で待機してくれていた。
「アルフごめん。私、約束破った」
「はぁ!?」
 昨日、私が助けられずに、何度も何度も容赦のない攻撃を浴びせられていたあのフェイトちゃんはダミーだったようで、本物のフェイトちゃんは私が見えないところで、私の情けない姿を見守ってくれていたらしい。
 約束、とはそれを私に言わないことだった。
 今朝、山小屋を出る時にそれを打ち明けられ、フェイトちゃんが痛い目にあっていなかったことに胸を撫で下ろした。
 しかしよくよく考えてみれば特訓はまだ終わっていないわけで、私に秘密を打ち明け、更にそれを正直にアルフさんに告げるフェイトちゃんの真意が見えない。
「だから、ダミーの代わりは、私がやる」
 アルフさんどころか、私もギョッとしてフェイトちゃんを見る。
 それは私も聞いてない。
「・・・・・・本気かい? 手加減しないよ」
「大丈夫。なのはが守ってくれるから」
 ね? と微笑むフェイトちゃん。
「・・・・・・うん!!」
「・・・・・・上等」
 アルフさんは不敵な笑みを浮かべる。
 私たちは変身を終え、ライトニングは昨日と同様に身の自由を奪われる。
「頑張ってね、ステラ!」
 その言葉を残して姿を消す。
「・・・・・・始めるよっ!」
 ライトニングの位置が不確定な以上、どうしても動き出しが後手に回ってしまう。
「くっ・・・!」
 結局その一瞬の遅れが致命的となり、ライトニングへの一撃を防ぐことは叶わない。
「ばかやろう! 昨日と何も変わってねぇぞ!!」
「ごめん、ライトニング!」
「次いくぞっ!!」
 ライトニングは私のことを信じてくれてる。
 私はその想いに応えなくちゃいけない。
「次っ!!」
 もう、私をプリキュアに誘ってしまったことの負い目を感じさせたりしない。
 私は私の意志でキュアステラになったんだって、信じてもらうために。
 戦士として、プリキュアとして、同じ所に立つために!
「次っ!!」
 きっと、目で追っちゃ駄目なんだ。
 キュアライトニングを・・・、フェイトちゃんを傷付けようとする者の気配を感じるんだ。
 内に棲む力の源へと耳を澄ませる。
 きっと感じるはずなんだ、パートナーに迫る危険を。
 私たちは二人で一つなんだから。
「次っ!!」
 自然と、身体が動いた。感じるままに身体を委ねる。
 ライトニングには、触れさせない!!
「っ!!」
 眼前でその拳を捉える。
「・・・・・・やった! やったよ、ライトニング!!」
 しかし、振り返ると彼女の姿はない。
「甘いんだよっ!」
 その声は既に遥か遠く。
 油断した! このままじゃ間に合わない。
「プリキュア! ステラバスター!!」
 砲撃を後方に向けて放ち推進力とし、その距離を一気に詰める。
「なっ!?」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
 これまでのお礼を籠めた一撃を、思いっきり振り抜く。
 アルフは受け止めはしたものの、勢いを殺しきれずにそのまま吹き飛ばされる。
「大丈夫、ライトニング!?」
「うん、ありがとうステラ、やったね。・・・あっ」
 ライトニングを捕えていた拘束具が消える。
「・・・・・・あたしに出来るのはここまでだ」
 戻ってきたアルフは、妖精達のフォローで大したダメージは負っていないようだ。
「ごめんなさい、アルフさん。私…、貴女にお礼は・・・・・・言えません」
 私のせいとはいえ、目の前で大切な人をあれだけ痛めつけられたことはすぐには収まりがつかない。
「なのは・・・」
「構やしないよ」
 怒るだろうと思ったけど、アルフさんは特に気にする風でもなかった。
「あんたたちが奴らをぶっ飛ばしてくれたら、あたしはそれで満足さ」
 そう言ってアルフさんは笑った。
「あとはあんた達次第だ。どうせ明日まではいるんだろ? 相手が必要ならいつでも声かけな」
 そう言い残して、アルフは森の中に消えた。
 良い人なんだってことは、わかってる。
 だから、いつかちゃんと謝ってお礼を言うためにここに戻ってこようと、私は心に誓った。


  ◆

「あらチンク、戻ってたのね」
 通路にて久方ぶりに見る顔に、足を止める。
「ああ今さっきな。これから姉様への経過報告だ」
 この妹は表情を表に出さないため、経過が良好か否か判断が付かない。
 クアットロの後ろに立つ二人に気付き、チンクは訝しげな表情を浮かべる。
「そうか、お前達が例の・・・」
 と、フラテロがチンクの前に立つ。
 見上げるチンクと見下ろすフラテロの視線が交錯し、対峙する二人の間に緊張が奔る。
「ちょ・・・、あんた達やめなさいよ」
 口ではそう言いながらクアットロは内心、チンクが糞生意気なこいつらに焼きを入れてくれないだろうか、なんて考えていた。
 しかしそんな願いは叶わず、張り詰めた空気はは消えて、そのまま両者はすれ違う。
 チンクは何故かちょっと満足げな笑みを浮かべていた。
「はぁっ!? 何あんた達この一瞬でわかりあっちゃってんの? 腹立つ!」
 力のある者同士、互いを認め合ったということなのか。
 ちょっと待ちなさいよっ! と喚き散らしながらクアットロは二人の後を追った。


  ◇

 約束の日。
 三日前と同じ場所に、同じ面々が揃う。
 上空でクアットロが「あんた達、今日こそはちゃんとやりなさいよ!!」と声を張っているが、ものの見事にスルーされている。
「・・・・・・少しは期待出来そうだな」
 対峙する二人から何かを感じ取ったのか、その声は少し満足げだ。
「敵である貴方たちに、お礼なんて言えない。でも、見逃してくれた貴方たちの想いには応えたい」
 ライトニングが斧を構える。
「私たちはこの一撃に、全てをかけます!」
 ステラもまた杖を構える。
 手の内の探り合いなんてさして意味は無い。
 結局のところ、これが通じなければ何をしたところでもはや為す術がないのだから。
 それならば、全力の一撃を。
「・・・・・・面白い。受けて立とう」
 ステラとライトニングは視線を交わして一度頷いて互いに手を取る。
「プリキュアの名の下に!!」
 二色の光に包まれる二人。
「悪しき魂に救済を!!」
 二人が大地を蹴るのと同時に、剣士達もまたこちらへと向かってくる。
「プリキュア! イノセントデコレーション―――」
 全ては、刹那の出来事。
 ステラが後方に向けてバスターを放ち、二人は瞬間的に加速する。
「―――アサルトっ!!」
 そしてライトニングが構えたバルディッシュで敵を一閃する。
 力同士の交錯に爆発が起こる。
 直撃はした。手応えも確かにあった。
 しかし、膝をついていたのはこちらの方だった。
「・・・・・・少しは腕を上げたようだな。・・・っ!」
 それでも一矢報いることは出来たようだ。
 彼等の顔を覆う仮面に、ひびが入った。
「だが、まだ甘い!」
 そのことが彼等の闘争本能に火を付けたのか、声色はこの状況を楽しんでいるように聞こえる。
「そこまでよ」
 そんな彼等の前に立ちはだかるクアットロ。
「・・・・・・貴様。何の真似だ」
 表情は見えずとも、水を差されたことへの苛立ちがわかる。
 さもなくば斬る、という威圧にもクアットロは動じずに飄々としている。
「今日はここで退散。相手がこの程度だったらあんた達ならいつでも捕えられるでしょ」
「貴様の指図など受けん!! そこをど・・・・・・ぬぅっ!?」
 突然、頭を抑えながらその場に崩れ落ちる二人。
「あんまり手を焼かせないでくれる?」
「・・・・・・き・・・さま」
 憎々しげな言葉を残し、仮面剣士達は動かなくなった。
「ったく世話のやける」
 誰にともなく吐き捨て、ソレラを肩に担ぐ。
「待て、クアットロ・・・っ!」
 ライトニングが何とか立ちあがると、牽制とばかりに足下の地面が抉られる。
「・・・・・・やるの? 今のあんたたちなら私でも余裕だけど」
 ジュエルシードを所持している可能性を考えれば、こちらの分が悪いのは確かだ。
 さすがに二人を担ぐのは無理なのか、フラテロは襟首を掴んで引き摺っている。
「こっちから退散してやるって言ってんだから、ありがたく思いなさい」
 だいたいいつもそうじゃないか、と口から出掛けた言葉を寸でのところで呑み込み、二人は何とか事無きを得たのだった。


  ◇

 ・・・・・・帰ってきた。二日ぶりの我が家だ。
 何も変わらない、いつもの我が家に涙がこぼれそうになる。
 ・・・・・・ちゃんと、守れたんだ。自分の力で、あの悪夢を追い払えたんだ。
 私に気付いた家族達が、走ってくる。
「ただいま!」

 でも、その悪夢はもういつでも私たちと隣り合わせなんだと知った。
 この世界だってちょっとしたきっかけでミッドチルダのようになってしまいかねない。
『負けることは許されない』
 その言葉の重さを知る。

 ―――強くなりたい。

 その想いは私の中で確実に芽生え始めていた。


(つづくの!)



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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

↓↓↓リリカルなのはの二次創作、同人活動をしている方、マイミク/マイピク募集中です。お気軽にどうぞ♪mixi pixiv Dolce

≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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※高町屋は「健全系」小説・漫画サークルを自称しています。本サイトでは成人向けは取り扱っておりませんが、なのはとフェイトがとてもとても仲良くするような表現が多々見られますので、そういったものはちょっと・・・という方は、ご覧になるのをお控えになったほうがいいかもしれません。
カテゴリ
リリカルプリキュア(2)


【長編】魔法少女リリカルなのはNightmare(59)
  第十三話
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SS(7)
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  ぷろぽーず ぱにっく!③
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  ぷろぽーず ぱにっく!①
(ViVidとForceの間?/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  きねんび(後編)
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  じぇらしー
(ちゅーなの/なのは、フェイト)
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(A's/なのは、フェイト)
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(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ、機動六課)

漫画(22)
  勉強会⑦+⑧
  勉強会⑥
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  勉強会③
  勉強会②
  勉強会①
  わがまま
  今は反省している。
  休日の過ごし方②
  休日の過ごし方
  戦場では一瞬の判断の遅れが死を招くんだ!
  共働きの核家族でありがちな風景
  間接キス⑤+⑥
  間接キス④
  間接キス③
  間接キス②
  2時間15分59秒。
  たしなみ
  虫刺され?
  またふーふー
  ふーふー

絵(20)
  ぜくしぃ!
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  高町なのはで表情練習
  甘えんぼなのはさん
  SAI購入記念?
  10000hit記念!!!
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  あけましておめでとうございました。
  メリクリ②
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