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リリカルプリキュア 第七話

夏コミお疲れ様でした。
新刊、現在委託申込中です。

当日、会場にて「七話はいつアップされますか?」と
質問下さった方、遅れてしまってすみませんでした。

それでは「続きを読む」より

第七話 どうしよう・・・ フェイトちゃんの正体がばれちゃった!?

です。






 視線を、感じる。
 そんな違和感が、何となくあった。
 昇降口に差し掛かった辺りで、それが気のせいではないことを確信する。
 その方向へと視線を向けると、学年も名前もわからない生徒とばっちり目が合ってしまう。
 私が慌てるよりも早く、相手は一緒にいた友人達と気まずそうにそこから立ち去っていった。
 振り返ると、再び見知らぬ生徒と視線がぶつかって逃げられてしまった。
 ・・・・・・一体、何なんだろう?
「どうしたの、フェイトちゃん?」
 上履きに履き替えたなのはは、ローファーのままでいる私を不思議そうに見ている。
「・・・・・・えっと」
 私がその違和感を口にすると、なのはは「あぁ」と事も無げに言う。
「気付いてないかもしれないけど、フェイトちゃんって結構視線集めてるよ」
 フェイトちゃん綺麗だからね、と笑うなのは。
 そういうことじゃないんだけどと言いたいのに、何だか自意識過剰っぽく聞こえそうで言い出せない。
 転校してきたばかりの時と状況が似ていて、それよりも奇異の色がより濃いように感じる。
 気になり出したら止まらなくて、聞こえてくる忍び声が自分に向けられているような気がして酷く落ち着かない。
 教室に近付くにつれ、あからさまに変化していく雰囲気に、なのはも私が言う違和感を感じ始めているようだった。
 教室に足を踏み入れると室内がざわめき、一気に視線が集まる。
 言い掛けた「おはよう」と一緒に、息を呑む。
「おはよう、フェイト、なのは」
 アリサとすずかが私たちに近寄ってくる。周囲を威嚇しながら、だ。
「アリサちゃん、これって・・・」
 みなまで云うなとばかりになのはを制するアリサ。
「原因はこれよ」
 そう言ってアリサは自分の携帯を私たちに差し出す。
 その画面を見て、私は固まってしまう。
 そこに映っていたのは。
 今まさに敵に向かって跳び蹴りを見舞わんとする、その瞬間のキュアライトニングの姿だった。




  第七話 どうしよう・・・ フェイトちゃんの正体がばれちゃった!?



 話題の的となっている例の写真は、いわゆる『学校裏サイト』と呼ばれるところに昨日の夜に掲載されたものらしい。
 昨日の日付、匿名での投稿で写真と共に、16時47分、謎の美少女戦士!? という書き込みがされている。
 学校側はこの裏サイトの利用の自粛を呼び掛けているものの効果の程は言うまでもなく、一晩でこの話題は殆どの生徒の知るところとなったようだ。
 数少ない利用自粛側であるアリサちゃん達も今朝になって、クラスメイトから何か知らないか尋ねられて驚いたのだという。
「心当たりは?」
 問われたフェイトちゃんは何も答えずに固まったまま。
「え? これがフェイトちゃんじゃないかってこと?」
 フェイトちゃんに代わってそれらしくとぼけながら、しまったな、と思う。
 ここのところ学校はもとより、町でも『謎の黒い影』の噂が話題になり始めていた。
 人の形をした大きくて真っ黒い物体がどこからとも無く現れては姿を消した、という目撃情報が頻繁に飛び交っている。
 その正体は正に、私たちが日頃戦っている『あれ』だ。
 町に被害が出ないように妖精達が結界を張って、その中に閉じ込めてしまえば私たちを含めて姿は見えなくなる。一瞬の目撃証言しかないのはそのせいだ。
 とはいえ敵に遅れをとってしまうこともあり、結界の展開を待たずに戦闘が始まってしまうこともある。昨日の戦闘が正にそれ。
 極力人目に付かないように気を付けていたのに、偶然とはいえ、まさか撮られてしまっていたいたなんて・・・。
「私たちも馬鹿馬鹿しいとは思ったんだけど、いたずらにしては手が込んでるし、ひょっとしたら何かがあるかもしれないと思って・・・」
 言いながら、ちょっと申し訳なさそうなすずかちゃん。
 この野次馬の中にあって、この二人だけは私たちの心配をしてくれていたのかと思うと、ちょっと涙が出そうになる。
「ちょっと似てるような気もするけど、フェイトちゃんじゃないよ」
 遠目の写真でピントがしっかり合っていなくて、髪の色が同じなだけで髪型自体は違うわけだし、本人だと言い切るにはちょっと無理がある。
「昨日は私たち一緒にいたし。ね、フェイトちゃん」
 フェイトちゃんがぶんぶんと首を縦に振る。
 アリサちゃんはその顔をしばしじっと見つめてから「ま、そりゃそうよね・・・」と溜息を一つ。
「はいはい! あの写真、フェイトは身に覚えがないって!! 誰かのいたずらだから!! 周りにもそう伝えて!!」
 手を叩きながら周囲に向けてアリサちゃんがそう声を上げると、風船から空気が抜けるみたいに教室の中の雰囲気が緩んでいく。
 なんだよー、やっぱりかよー、という声と共に、教室の外にいた野次馬も散開していく。
「ありがとう、アリサ」
「あまり意味があるとも思えないけどね」
 内心「だよね」と彼女の言葉に同意する。
 結局のところ事の真偽なんて関係無くて『転校生』『金髪美少女』『戦うヒロイン』というこの噂で一騒ぎしたいだけ、という感じが否めない。
 事態の収拾にはしばらく時間が掛かりそうだ。
「・・・・・・で?」
「は?」
 アリサちゃんの悪戯っぽい笑顔に、フェイトちゃんが目を丸くしている。
「実際のところ、どうなのよ」
 私になら本当のこと話せるでしょ? ということらしい。
 あー、アリサちゃんはまだ疑ってるんだ・・・。
 フェイトちゃんはと言えば、ものすごくあたふたとしながら否定してる。
「火のない所に煙は立たない、とはよく言ったものよね」
 これはもう「この写真に写ってるのは自分です」以外の解答を認める気などないのだろう。
「もぉ、アリサちゃんってば。フェイトちゃん困ってるでしょ」
 助け船を出すと、アリサちゃんは不敵な笑みをこちらに向ける。
「そう言えば、もう一枚あるのよ」
 ほら、見せられた違う画像に小さく肩が跳ねる。
 ・・・・・・変身した私だ。
 こっちはライトニングに比べれば割と鮮明に写っている。
「すごいわよね、髪がピンクって」
 言いながら、ちょっと引き気味なアリサちゃん。
「あの写真がフェイトだったら、ひょっとしてこれってあんたなんじゃないかって思ったけど」
 再び、ビクンと肩が跳ねる。
 こういう時、冷や汗が一気に吹き出すって本当だったんだ・・・。
「ま、それは無いわよね」
 アリサちゃんはそう言って一笑に付す。
 流石に話が飛躍しすぎだと思ってくれたらしい。
(なのはずるい!!)
 念話で非難の声が届くも、返す言葉が見つからない。
 その後のアリサちゃんによる尋問は、始業のチャイムによって渋々打ち切られた。
 大方の予想通り、校内での好奇の視線が治ることはなかった。
 始めは「違うんです、あれはいたずらなんです」と弁明を繰り返していたフェイトちゃんだったけれど、その必死さが火に油を注ぐ行為だと気付いたらしく、放課後になる頃にはだんまりを決め込むようになった。
 それでもアリサちゃんだけは折に触れてはガンガン攻め込んでくるので、だいぶしんどそうだった。


  ◇

「どどど、どうしよう・・・」
 放課後。とりあえず時の庭園に戻って作戦会議。
 溜め込んでいた不安と動揺が一気に吹き出したフェイトちゃんは、これでもかというくらいにあたふたしている。
「落ち着いて、フェイト」
「そうだよフェイトちゃん。みんな面白がってるだけで、本気に思ってる人なんていないっぽいし」
 フェイトちゃんはぶすっとして、じとりとこちらを睨めつける。
「なのははいいよ。全然ばれてないんだし・・・」
 今回の件に関しては、あの画像とフェイトちゃんが無関係であることを証明出来ない限り、私が何を言ったところで彼女には通じなさそうだ。
 とはいえ正体がフェイトちゃんである以上そんなに簡単なことじゃないし、ほとぼりが冷めるのを待つ以外の方法があるようにも思えないんだけど、それじゃまずい。
 きっと興味本位でフェイトちゃんの後を付ける人たちが出てくる。
 そうなればいざ有事の際に、その人たちを危険に巻き込んでしまいかねない。
 何か、何か良い方法はないものか・・・。
「大丈夫だよ、フェイト!」
「・・・・・・アリシア?」
「ここはお姉ちゃんにまかせなさい!!」
 そう言って胸をはるアリシアちゃん。
 何でだろう。嫌な予感しかしない。


  ◇

「なの姉、なの姉、なの姉!」
 予想はしていたけど、家に着くやいなや奥からドタドタと子供たちの足音が近付いてくる。
「これ見た!?」
 そう言って着きだしてきた携帯には、朝にも見せられたピンぼけのキュアライトニングの姿が。
 どうやら小学校でもそれなりに話題になっているようだ。
「あ、今日はフェイトさん一緒じゃないんだ・・・」
 あからさまに残念そうにしているギンガ。こういうところはさすが実の姉妹。
「もぉギンガまで一緒になって。駄目だよ、こんなこと面白がってちゃ」
 エリオとキャロまで目をキラキラさせている。
「これは誰かのいたずら。フェイトちゃんは全く身に覚えが無いんだって」
 えー、と不満そうな声を上げる姉妹。
「だから言ったでしょ」
 ティアナが呆れながら、これ見よがしに溜息を吐いてみせる。
 とはいえ、ティアナもちょっとだけ残念そうに見えるのは気のせいではないのだろう。
 と言うのも、この子達の気持ち、わからなくはない。
 単なる野次馬根性とは別に、この写真の人物の正体がフェイトちゃんであってほしい、という願望があるんだと思う。ちびっ子二人が目を輝かせている理由もそれだろうし。
 優しくて、綺麗で、凛々しくて。正に憧れのヒロイン像にぴったり。
 私だって何も知らないままこの状況に置かれれば、事の真偽に関係無く写真の人物がフェイトちゃんだと完全に信じ込んでいるだろう。
 ギンガとスバルは未だ納得がいかないようで、二人で携帯を覗き込んでいる。
「あのフェイトさんが、こんな破廉恥な恰好するわけないでしょ」
 と、ティアナ。
「だよねー。もしかしたらフェイ姉ってコスプレが趣味なのかなって思ったけど、そんなわけないよねー」
 と、スバル。
「いやいや、案外ああいう人に限ってこういうの好きだったりするんじゃないかな」
 と、ギンガ。
 ・・・・・・おねがい、もうやめてあげて。
 もしもこの場にいたのなら、とっくにフェイトちゃんのライフはゼロになっていたに違いない。


  ◆

 生体ポッドの中で涼しげに眠る仮面を付けた二人を、クアットロは憎々しげに睨み付けている。
 今後の彼等の処遇について、ウーノが指示を仰ぎに行っている。
 こいつらのお陰であと一歩の所までプリキュアを追い込んだのも事実だが、そんなことはどうでもいい。
 あれだけ好き勝手やりたい放題をしておきながら、目の前でこうしてのうのうと眠りについていることがたまらなく腹立たしい。
 生意気な言葉たちが脳内で再生されて、このまま目が覚めないようにしてやろうか、なんて考えているとウーノが姿を現す。
「ドクターから許可がおりたわ」
 戦力については申し分ないため、多少その部分を犠牲にしてでも従順性を上げる、というクアットロの希望がそのまま叶えられることとなった。
「賢明な判断ですわね」
 しかしそれを喜ぶでもなく、厭味たっぷりに返す。
「彼等の再調整にはそれなりに時間が掛かるわ。なんなら――」
「それなら、こちらはこちらで動かせていただきますわ」
「・・・・・・何か策があって?」
 頷くクアットロに浮かぶ不敵な笑みに、ウーノは「無理だけはしないように」とだけ声を掛けた。


  ◇

 次の日。
 昨日に比べれば、騒ぎは幾分か収まったように感じられる。
 それでもまだ噂に踊らされ張本人の顔を拝んでやろうと扉の影からチラチラと覗き見する連中が後を絶たない。
 アリサが一喝して追い払ってくれるのはありがたいけれど「私にだけは本当のこと話してくれてもいいのよ?」という態度は全然ありがたくない。
 アリシアは一体何をするつもりなのだろう。
 何度聞いても「知ってるとかえって不自然になっちゃうかもしれないから」と教えてくれなかった。
 アリシアを信用していないわけじゃないけれど。
 どうしてだろう。あまり良い予感はしない。
「大丈夫、フェイトちゃん? 顔色悪いよ?」
 大好きななのはのお弁当を前にしても箸が進まないくらいに精神は穏やかじゃない。
「食べなきゃ、身体に悪いよ? ほら、あーん」
「ちょっ!?」
 いきなり何をしだすんだこの娘は、と驚いて後ろに飛び退く。
 それと同じタイミングで廊下から野太い声が響いた。
「金髪が出たぞー!!」
 ・・・・・・何だ、その掛け声。
 しかしその意味を瞬時に理解したのか室内はざわつき、クラスメイトたちは教室を飛び出すか、携帯を取り出して画面を見るかに二分化された。
「・・・・・・うそ」
 信じられない、といった表情のアリサの携帯を覗く。
(・・・・・・アリシア!?)
 そこにはキュアライトニングの格好をして笑顔でポーズを決めている姉の姿が。
 元々ツインテールなので着替えるだけで、もはやそれっぽい。
(というかこれ、ポーズとる必要ある!?)
 ご丁寧にシークレットブーツで身長の底上げまでしている。
 果たしてそれは、影武者になりきるためなのか、はたまたコンプレックスの為せる業なのか。
 一斉に視線が私に集まる。
 この写真にちょっとした悪意を感じなくもないけど、このチャンスを逃すわけにもいかない。
「だから言ったでしょ、私じゃないって!」
 みんな腑に落ちない表情で視線を携帯へと戻すと、画面に情報が錯綜し始める。
『これ場所どこ?』
『美術室前の階段』
『フェイトさん、今教室にいるんだけど』
『は? 別人ってこと?』
『どっぺるげんが?』
『え、俺死ぬの?』
『いやお前誰だよ』
 これで私の疑いが晴れたと胸を撫で下ろしていると、俄に教室がざわつき始める。
 再びアリサの携帯を見ると、事態は思いもよらぬ方向へと転がっていく。
『美術室に入ったはずなのに、中に誰もいない・・・』
『消えた!?』
『え、何? 怖い話?』
『おいやめろ』
 一転して教室が恐怖におののき出す。
 そんなことを知る由もないアリシアは止まらない。
『出た! 今度は体育館前のトイレ』
『は? 方向真逆じゃん』
『もちろんフェイトさんは教室』
『包囲しろ、逃がすな!』
『また消えたんだけど・・・』
『なにそれこわい』
『つまらん冗談はよせ・・・』
 そんなことを何度か繰り返すうちに、校内の雰囲気はもはや好奇から恐怖へと変わり、学校のあちこちから女子の悲鳴が聞こえる。
 アリシアってば、やってくれちゃって・・・。
 なのはも頭を抱えている。
「まさかとは思うけど・・・」
 平静を装いながら冷や汗を流す私に、この状況にあっても動じる様子のないアリサが冷静な口調で続ける。
「ひょっとしてあんた、妹いる?」
「いないよ」
 狙い澄ましたような、即答だった。


  ◇

 結果としては、アリシアの作戦は成功と言えるだろう。・・・・・・あれを作戦と呼んでいいのかどうかは疑問だけれど。
 何度か現れては消えるアリシアに、今回の件は学校の怪談的な方向へと向かい、意識はほとんどと言っていい程に私からは遠ざかっていた。
 とはいえ、まだ安心は出来ない。
 最後の敵が、隣にいるのだから。
「アリサ、今日はお迎えは?」
「断った。あんたたちと一緒に帰るからって」
「ひょっとして・・・・・・まだ私のこと疑ってる?」
 さぁどうかしらね、と口では誤魔化すものの、現状の行動がそれを肯定している。
「あ、あれは私じゃないってことでみんな納得してくれたじゃない」
「あんたが言う『みんな』に私は含まれてないわ。現にほら」
 そう言ってアリサが親指を立てて後ろを指すので、振り返ると同じ制服を着た生徒が数名慌てて姿を隠す。
「恐らく新聞部か何かだろうけど」
 すずかがその生徒達に近付いて話をつけるとそそくさと帰って行った。
 ・・・・・・一体何を言ったんだろう。
「ああいう連中もいるし、ほとぼりが冷めるまでは一緒に帰ることにするわ」
「ありがとう・・・・・・って、アリサもまだ納得はしてないんだよね?」
 まぁね、とアリサは少し不機嫌そうだ。
「別にあの写真があんたかどうかなんて、もうどうでもいいわよ」
「え、じゃあ何で・・・」
「あんたは秘密が多過ぎるのよ」
 秘密? と困惑するフェイトにアリサは続ける。
「大体あんた、どこに住んでんの?」
「えっと・・・、あっち・・・・・・の方?」
「なんで疑問系?」
「あー、うー・・・」
「それも言えない、と」
 呆れているアリサに返す言葉が無い。
「もぉアリサちゃん、あんまり苛めないのー」
「でもあんたはこの子の家を知ってると」
「う・・・」
 自分に矛先が向きそうななのははあからさまに「しまった」という表情を浮かべている。
「何かすっごい腹立つ!!」
「まぁまぁアリサちゃん落ち着いて」
 すずかが宥めるものの、逆に段々とヒートアップしていく。
「私が納得出来ないのはっ! 秘密を隠さなきゃいけない対象として、私とすずかが『その他大勢』に含まれていることよっ!!」
「あっ、ごめん」
 張り詰めた糸を切る、なのはの呑気な声。
「おつかい頼まれてたんだ。スーパー寄らなきゃいけないから、私はここで」
「えっ」
 呆けている間に、なのははそそくさと行ってしまう。
「ちょっ、待ちなさいよ! ・・・・・・ちっ、逃がしたか」
「あぁっ、そうだ私も! ひいっ!?」
 ガッ、と腕を掴まれてフェイトは小さな悲鳴をあげる。
「おっと逃がさないわよ。今日は納得のいく答えをもらえるまで帰さないから」
 怯えるフェイトにサディスティックな笑みを浮かべるアリサ。
(ずるいよなのは! 自分ばっかり!!)
 念話で非難すると思いの他冷静な声が返ってくる。
(だって、この状況で二人一緒だとまずいよ。敵が出た時のこと考えたら・・・)
 その建前はずるい、とフェイトは思う。
 上手く逃げ出した事実は変わらないのに、それじゃ責めるに責められない。
(なのはの薄情者ぉー!!)
 そこからは地獄のような沈黙の時間が続く。
「この道、さっきも通ったわよ」
「そ、そうだっけ?」
 責めるでもなくただ、隣を歩き続けるアリサ。
 手を繋いでいるのは端から見れば仲が良さそうに見えるが、実際のところは拘束だ。
 フェイトが折れるまで、絶対に諦めるつもりはないようだ。
 それがわかっているからすずかも申しわけなさそうにはしているけれど、口を挟むことなく二人の後ろを着いて行っている。
 対処も思いつかずただ混乱するばかりの状況で、なのはの建前が実現してしまう。
『まずい、敵が来る! この近くに!!』
 何でこのタイミングで・・・! そう心の中で呟く。
 結界を張ろうにも、あの二人が見ている前だとさすがにまずい。
 一旦二人の視界から姿を消さなければ。
「どうしたのよ、フェイト」
 突然立ち止まって動こうとしないフェイトを不審げに見るアリサ。
 その手を振り払って、フェイトは走り出す。
「あっ! お待ちなさい、フェイト!!」
 慌ててすずかと二人で追いかけるものの、角を曲がる頃にはもうフェイトの姿は無かった。
「まったく逃げ足の早い・・・」
「はぁーい、そこのお二人さん」
 不意に、背中を撫でる声に驚いて振り返る二人。
 そこに立っていたのは、眼鏡の奥に底意地の悪そうな瞳を光らせた、すこしばかり年上と思しき少女だった。
「ちょぉっと、お姉さんに協力してもらえるかしら?」


  ◇

 そろそろ、かな。
 フェイトちゃんを置いてきた形にはなっちゃったけど、あのまま二人ともあの場にいたら共倒れだ。
 あとはフェイトちゃんの携帯にリニスさんの振りをして連絡して、急用があるから今すぐ帰るように伝えれば今日の所は何とか逃げられるだろう。
 しかし携帯を耳に当てて聞こえてきたのは呼び出し音ではなかった。
『お掛けになった電話は電波の届かないところに―――』
 あれ、おかしいな・・・。そう思っていたところに、リンディが声を上げる。
「なのは、大変! あいつらよ!! ここから近い!!」
「っ!!」
 まさかさっき言ったことが本当になるなんて・・・!
 私は急いで今来た道を引き返す。
 アリサちゃんとすずかちゃんが危ない!!


  ◇

 結界が貼られるのと、悲鳴が響き渡ったのはほぼ同時だった。
「アリサっ、すずかっ!!」
 元いた場所に戻ると、空中に佇むクアットロと、その傍に捕らわれた二人が。
「フェイト!!」
「フェイトちゃん!!」
 そして目の前に立ちはだかる巨大な黒い影。
「二人を放せっ!!」
 バルディッシュを構えると、二人を拘束する光の縄が締め上げられてアリサとすずかが苦しげな悲鳴を上げる。
「おーっと、動かないでもらえる? 大切なお友達に傷が付いちゃうわよ?」
「・・・・・・卑怯な」
 憎々しい笑みを浮かべるクアットロに、歯軋りをするフェイト。
「さぁ、貴女の持ってる金色のそれ、渡してもらいましょうか」
「そ、それは・・・」
 その要求を受け入れることは、プリキュアの力を放棄するということ。そんなこと、出来るわけが・・・。
 フェイトが躊躇っていると、再び二人の悲鳴が響く。
「友達よりも、プリキュアが大事?」
 その言葉を掛けられてなお、バルディッシュを手放せずにいるフェイトに、クアットロは失笑を漏らす。
「薄情ねぇ。お友達が可哀想。まぁ故郷を捨てて逃げ出した腰抜けちゃんですもんねぇ」
「・・・・・・黙れっ」
「いいわねぇ、その表情」
 たまらないわ、と恍惚の表情で身悶えるクアットロ。
「さぁオマエラー、やっておしまい!!」
 されるがままに敵の攻撃に晒されるフェイト。
 生身では防御の姿勢を取ったところで無意味などなかった。
 殴られ、蹴られ、投げ飛ばされ、叩き付けられ、もはや為す術がない。
 気を失ってなお、容赦なく暴力を浴びせられるフェイトに、すずかが悲鳴をあげる。
「やめさせなさいよっ!! フェイトを殺す気!? ちょっとっ! 聞いてんのっ!?」
「やばいやばい、何これ? ものすんごく気分良いわ~」
 高飛車な笑い声が木霊する。
「はぁぁぁっ!!」
 覇気のある声と共に飛んできた蹴りをまともに喰らい、クアットロはその場から吹き飛ばされる。
「出た! ピンク!!」
 ピンクって言うな! と内心叫びながら漆黒の人形も蹴り飛ばすキュアステラ。
「なにすんのよっ!! 正義のヒロインが不意打ちとか、どういうことなの!?」
「人質を取る貴女に言われる筋合いはない!!」
 ステラは二人の拘束を解いて、抱きかかえる。
「大丈夫? アリサちゃん、すずかちゃん」
 聞き覚えのある声に、二人はハッとする。
「まさか・・・・・・なのはちゃん?」
 キュアステラは何も答えずに薄く微笑む。
「あんた・・・・・・本当になのはなの? これって一体・・・」
 妖精が二人の前を飛び交うと、二人は瞬く間に眠りに落ちる。
「リンディ、二人のことお願い!」
 まかせて! とリンディは二人と共に姿を消した。
 ステラはオマエラーを思い切り彼方へと投げ飛ばし、急いでフェイトのもとへ。
「フェイトちゃん、大丈夫!?」
 満身創痍でステラの声にも応えはない。生身にそのままダメージを負ったのだから無理もないが。
「大丈夫! 命に別状は無いから!」
「フェイトちゃん・・・」
 今はレティの言葉を信じるしかなく、ステラはゆっくりと立ちあがる。
 陽炎のようにステラの周りに桜色の光が揺らめき始めると、襲いかかる黒い影を左手の一振りだけで吹き飛ばしてしまう。
「ちょっと・・・、頭冷やそうか・・・」
「ひぃっ!!」
 殺意が籠められた視線に晒され、クアットロは思わず悲鳴をあげていた。
「レイジングハート、バルディッシュ!!」
 ステラの声に呼応して、左手のレイジングハートが杖に、右手のバルディッシュが斧へとその姿を変える。
 突然の二刀流に、戻ってきたリンディが驚きの表情を浮かべる。
「ステラ!? 何する気!?」
 しかしその声は届かず、ステラは力を解放する。
 その視線は黒い影になど見向きもせず、一直線にクアットロを捉えている。
「ちょっ、こっち!? オマエラー、何してんのっ! 早く私の盾になんなさい!!」
 声と足が震えている。本能的に命の危機を感じているようだ。
「プリキュア! イノセントデコレーション!!」
 防御などもはや意味をなさず、力の波に呑み込まれてそのまま浄化されてしまう。
 影が消え現れたジュエルシードを、静まらない怒りに任せて乱暴に掴むステラ。
「ちょ、ちょっと熱くなり過ぎじゃない? ひぃっ!」
 再び、殺意の眼差しが向けられる。
「きょ、今日はこの辺にしとくわ。じゃあねっ!」
 クアットロが逃げるように姿を消すと、ステラは膝から崩れ落ちる。
 妖精たちが慌てて近付くと、変身が自然と解けていく。
「な、なのは大丈夫? 無茶よ、いきなりあんなことするなんて・・・」
「わ、私のことなんかより、フェイトちゃんだよ。早く、時の庭園に運ばなくちゃ・・・」
 ふらつきながらも、フェイトを背負って歩き出すなのは。

 フェイトの危機に焦る少女達は、気付く由もない。
 手にしたその蒼の宝玉が、異彩な輝きを放っていることに。

(・・・・・・つづくの!)




次回予告

傷つき倒れるフェイト。時の庭園に迫る危機。
リニスを、妹を、そして、いつか母さんが帰ってくるこの場所を・・・・・・。
絶対に、守ってみせる!!

次回、リリカルプリキュア!
『私だってプリキュアになれるもん!』

リリカルマジカル、がんばります!



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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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プロフィール

高町屋

Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

↓↓↓リリカルなのはの二次創作、同人活動をしている方、マイミク/マイピク募集中です。お気軽にどうぞ♪mixi pixiv Dolce

≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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【長編】魔法少女リリカルなのはNightmare(59)
  第十三話
  第十二話
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  第十話
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  第八話
  第七話
  第六話
  第五話
  第四話
  第三話
  第二話
  第一話

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  ぷろぽーず ぱにっく!①
(ViVidとForceの間?/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  きねんび(後編)
  きねんび(前編)
(A's/なのは、フェイト)
  じぇらしー
(ちゅーなの/なのは、フェイト)
  わたしのままとまま
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
  わがまま
(A's/なのは、フェイト)
  ぱぱ?
(StS/なのは、フェイト、ヴィヴィオ、機動六課)

漫画(22)
  勉強会⑦+⑧
  勉強会⑥
  勉強会⑤
  勉強会④
  勉強会③
  勉強会②
  勉強会①
  わがまま
  今は反省している。
  休日の過ごし方②
  休日の過ごし方
  戦場では一瞬の判断の遅れが死を招くんだ!
  共働きの核家族でありがちな風景
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  間接キス④
  間接キス③
  間接キス②
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  ふーふー

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