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【SS】じぇらしー

 日差しに目が慣れてしまったせいで、玄関がすごく暗く感じる。
 汗ばんだ肌とブラウスの間を、朝の日陰の涼しさが通り抜けてとても心地良い。
 でも、そんな心地良さも一瞬で消し飛んで。
「・・・・・・あっ」
 開きかけた下駄箱を、思わず条件反射で閉めてしまう。
「・・・フェイトちゃん?」
 ばたん、という音に彼女が首を傾げている。
「どうしたの、何か忘れ物?」
「な、何でもないよ! 何でも!」
 そんな慌て様に、彼女は気付いてしまう。
「隠さなくてもいいよー。また入ってたんでしょ? 手紙」
 笑顔の彼女に無言で頷いて、靴と内履きを取り替える。
 手紙もそっとポケットの中にしまいこむ。
 私の心のざわめきに気付かずに、彼女はからかう様に言う。
「相変わらずすごい人気だね、フェイトちゃん」
「・・・・・・なのはのいじわる」



    じぇらしー


「来たわね、問題児」
 おはよー、と教室に入ると小学校からの親友が悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「もぉ、アリサちゃんってば」
「久しぶりだね、なのはちゃん」
「すずかちゃん久しぶりー」
 旧友たちのやりとりを私は笑顔で見つめる。
 なのはは昨日まで一週間、局の仕事だったので久しぶりの登校になる。
 なのはのいない学校のつまらないことといったらもう・・・。
 筆舌に尽くしがたいとはこのことだ。
 心の中の本音は「久しぶりなんだからもっと構ってよなのはー」なんだけど、流石にそれは我侭が過ぎると自分でも思うから我慢。だから、笑顔。貼り付けの、笑顔。

「それで? 今回なのは様はどれだけの人に愛されたの?」
 アリサが興味本位でからかうと、なのははむぅ、と頬を膨らませて不満を表しながらも鞄を開けて見せる。
「・・・・・・すごいね、なのはちゃん」
 固まるアリサとすずかを見て、なのははふぅ・・・とため息をつく。
 何事かと思い、覗いた私もまた固まってしまう。
 たくさんの手紙に蓋をされて、なのはの持ち物が見えない。
 ―――また、増えてる。
 中等部に入学してから、退っ引きならない事態に私は直面している。
 朝、下駄箱を開けて手紙が入っている確率が急激に上昇したのだ。
 それはいわゆる、「らぶれたー」とか「ふぁんれたー」というやつ。
 私はいいんだ。なのはひとすじだから。
 そんなことよりもっ!
 問題の一番の核は、なのはの魅力にみんなが気付き始めたことだ。
 彼女宛の手紙の多さが何よりもそれを物語っている。
 なのはの魅力は何といっても、神に愛されたその可愛さなんだけど、それ以外にも挙げだしたらキリがない。
 なのはがいない時にクラスメイトの女の子の中で話題に上がったことがある。
 彼女たちが言うには。
 私は外見的に大人な感じで、なのはは内面的に大人な感じ。らしい。
 私のことはさておき、なのはに関してはなるほどと思う。
 確かに彼女の落ち着きとか、普段の立ち振る舞いとか、何事にも動じないところとかは、色んなことに浮き足立っている同年代の中では、確かに目立つ。
 というか、そんなことより私は焦ってる。
 私が気付いていないなのはの魅力に、なのはのことを一番愛してると自負してる私よりも先に周りのみんなが気付いたってことに。
 ・・・悔しい。

「・・・で? その量でもあんたは全部に返事を書くわけ?」
 まさか、そんなことしないわよね? と確認するかのように尋ねるアリサに、なのはは「え? 書くよ?」と、何故? と言わんばかりに答える。
「名前が書かれてない人のは無理だけど、それ以外は全部書くよ」
「まったくあんたって子は・・・」
 そんな暇があったら少しでもフェイトの相手してあげなさいよあんなに構ってオーラ出しまくりじゃない、とまでは口に出さない。
 今更二人の問題に関わる気もない。そんなのはもはや、馬鹿馬鹿しいを超えて、愚かだ。
「そういうんも人気の一因なんやろうね」
 照れるでもなく、ちょっと困ってにゃはは、と頬を掻くなのは。
「フェイトちゃんも書いてるでしょ?」
「・・・えっ? わ、私は・・・・・・」
 突然同意を求められて、動揺してしまう。
「・・・書かない」
 書く事なんて、書きたい事なんて、無い。
「・・・それはちょっと酷くない?」
 なのはの責めるような口調に、私はムッとする。
「そ、そんなの私の勝手じゃない!」
 でも、感情が先に出てる私とは対照的にやっぱりなのはは冷静で。
「だって、手紙くれた人はきっと待ってるよ? 想いには応えてあげられないけど、それはちゃんと言葉にして伝えてあげなきゃ、その人は次に進めない。そんなのお互いにとって良くないよ」
 その台詞が、実はとても嬉しいはずのものであることに気付く余裕は、その時の私にはなくて。
「・・・フェイトちゃん?」
 正しいんだ。なのははいつだって。
 でも、私はそんな正論を聞きたいわけじゃない。
 どうして、わかってくれないの?
「なのはのばかっ!!」
 でも、口を開いて出てきたのはその一言だけ。
 勢いに任せて教室を飛び出したはいいものの、もうすぐHRが始まるから戻らないといけない。
 ・・・気まずいな。かっこ悪すぎだ、私。
 もう、何もかも、最悪。


 あちゃー。
 ・・・またやっちゃったなぁ。
 最近は、こんな風によく食い違う。
 私が悪いことはわかっているんだけど、実際にどこを直したら良いのかがよくわからない。
 このままじゃ、いつかホントにフェイトちゃんに愛想尽かされちゃうんじゃないかと不安になる。
「なのは、あんた乙女心をわかってなさすぎ」
 しん、と静まりかえっていた教室もいつもの喧騒を取り戻す。二人の痴話喧嘩なんてもはや日常茶飯事。
「・・・私はその『乙女』には含まれてないの?」
 問題がそこじゃないとはわかりつつ、ちょっと心外だなという思いが口に出る。
「なのはちゃん夫婦はどう考えたって、精神的にフェイトちゃんが嫁やからなぁ」
「でも、あんな風に一途に想いを伝えてくれるのって、ちょっと羨ましいな。ね、アリサちゃん」
「なっ、何でそこで私に振るのよっ」
 ・・・結局その日、フェイトちゃんは学校で口をきいてくれなかった。


「・・・ばか」
 ベッドの上で枕に顔を埋めながら、また治まりきらない感情が吐き出される。
 ・・・なのはの、ばか。
 言葉にしなきゃ何もわからないし、伝わらない。
 そう言ったのはなのはなのに。
『今日はごめんなさい。フェイトちゃんとお話がしたいです』
 なのはから届いたメール。返信はまだしていない。
 怒っているのに、なのはから連絡がきたら反射的に嬉しくなってしまう自分の単純さに何だか凄く腹が立ったから。
 どれだけなのはのこと好きなんだ、私。
 まぁ仕方ない。なのはなんだから。

 ――不公平、だと思う。
 なのはが手紙を貰う度に、私は不安に押し潰されそうになるのに。手紙を出した相手に嫉妬の心が抑えられなくて、どうにかなっちゃいそうなのに。
 なのはは私が手紙を貰っても、平然としてる。それどころかちゃんと返事を書けとまで言ってくる。
 なのはは私が他の誰かの告白を受けても、それでも・・・・・・何とも思ってくれないのかな?

 ・・・なのはは本当に私のことが大事なの?

 そんな子供みたいな想いに、魔が差した。

 携帯の液晶を見つめる私の鼓動は不安と期待に打ち震えている。
『今日手紙を貰った人に会ってみようと思う。素敵な人だといいな』
 送信ボタンを押すときは、手が震えた。
 なのはの気持ちを試すなんて、信じていないようで嫌だけど。
 ・・・でも、確かめたい。知りたいんだ。君の、気持ちが。
 そして数刻を置かずに、携帯が着信を告げる。
 君が好きな曲のはずなのに。
 今はまるで、悲鳴みたい。
 いずれ、事切れたように静かになった。
 なのはの不安に揺れる表情を想像しながら、私は一人悪戯をした子供のようにほくそ笑む。
 いい気味だ。今夜は眠れぬ一夜を過ごせばいい。
 ・・・でも、明日また局の仕事があるのに、ちょっと可哀想だったかな。


「設定がベタでも、フェイトちゃんくらい美人さんやと絵になるなぁ」 
「しーっ。声が大きいよ、はやてちゃん」
 物陰に身を潜める三人の視線の先。
 体育館裏。向かい合うちょっと気まずそうな二人。手紙の送り主と受取人。
 その受取人であるフェイトは今更ながら深く深く後悔していた。
 なのはの気持ちを試すために、今目の前に立っている女の子を私は利用したんだ。
 そう考えると、とてつもない罪悪感が押し寄せる。
 早くこの状況を終わらせよう。もう、そればかりを考えていた。
「あの・・・、手紙読みまし・・・」
「嬉しいです!」
 フェイトの言葉を遮る声は本当に嬉しそうで。
「まさか、本当に来てくれるなんて・・・」
 感極まって今にも泣き出してしまいそうだ。
 そんな彼女にますます罪悪感は募っていく。
「ごめんなさい。私、貴女の気持ちには・・・」
「テスタロッサさんの気持ちは知ってます。でも・・・」
 その真っ直ぐで強い意志を持った視線に、心の奥まで覗かれてしまいそう。
「私には、あの人を好きでいようって無理してるように見えます」
「そんなこと・・・」
 考えたことがなかった。
 なのはを好きであることに疑問を持ったことなんてなかったから、そんな概念がそもそも存在しなかったんだ。
「最近のテスタロッサさん、辛そうだから・・・」
 確かに苦しいときはある。でもそれは、なのはを好きでいるために辛いんじゃない。
 ・・・・・・そっか。
 ちゃんと伝えてなかったのは、私の方なのかも知れない。
 ずっと一緒にいたから、いっぱい同じものを共有したから、伝える事を少しだけ怠けちゃったのかも。
 少しだけ、吹っ切れた気がする。何だか、心の中を風が吹き抜けた感じ。
「ありがとう。でも、いいんだ」
 どっちが悪いとかじゃない。
 二人で、向き合っていかなきゃいけないんだ。ちゃんと、伝えあって。
「どうしてですか? あの人のせいで、またテスタロッサさん辛い想いするに決まってるのに・・・」
 彼女は少し、私の答えに苛立っているようだった。
「私なら絶対貴女にそんな想いさせません!」
 彼女の見せた幻想の優しさに、一瞬、心に隙が生まれた。
 気が付いたら、唇に何かが触れていた。
 柔らかい、何か。なのはのじゃない、何かが。
「・・・・・・私、本気ですから」
 上気した、眼前の少女の頬。
 その、真剣な眼差し。
 そして唇に残る感触の名残は、いつもみたいに安心や幸福で私のことを満たしてはくれない。それどころか・・・。

 私は何も言わず、その場を逃げ出していた。


 次の日。最悪なことにあの事態は既に校内に広まってしまっていた。
 ・・・午後から学校に来た、なのはを除いて。 
 私はまともになのはと目すら合わせられずにいた。
 なのははそのことや、周囲からの視線がいつもより気になることの原因が、昨日のことにあると思って、ちょっとしょんぼりしている。
 なのはだけが知らない。でも、気付かれるのもきっと時間の問題。
 どうしよう。・・・本当にどうしよう。このことをなのはが知ったらきっと怒る。嫌われてしまうかもしれない。
 無関心に「じゃあその子とお幸せに」とか言われて捨てられてしまったら。もう、生きていけない・・・。
 今日一日、気が気じゃなかった。恐怖に震えながら、怯えながら過ごしていた。

 放課後の喧騒に包まれていた教室が一瞬で静まりかえる。
 噂の彼女が、姿を現したのだ。
 ど、どうしよう!? このまま外に連れ出して、今回の件をなのはに言わないようにお願いするべきだろうか。いや、この状況で彼女を連れて教室から出たりなんかしたら明らかに意味ありげじゃないか。もう他人の振りをするしか・・・。ってそんなこと出来るわけが・・・。
 混乱する私の前を、彼女は微笑んで素通りする。
 事もあろうに、彼女はなのはの前で立ち止まった。
 見ず知らずの少女にいきなり敵対的な視線で見下ろされ、なのははきょとんとしている。
「私、昨日フェイトさんに告白しました」
 悲鳴を上げたかった。全て無かった事に出来たら、どんなによかっただろう。
「は、はぁ・・・」
 反応に窮したなのはがそれだけ答えると、彼女の方も期待した反応とは違ったのだろう。
 ちょっと戸惑ったような表情を見せたが、それならとばかりに余裕の笑みで言い放った。
「フェイトさんとキスもしました」
 教室に居合わせた全員が息を呑んだ。修羅場の始まりだ、と思ったんだろう。
 私は、心臓が止まる想いだった。
 いや、いっその事止まってくれればよかったのに。
 なのはも、それには流石に驚いたようで目をぱちくりさせている。
「えっと・・・、それで?」
 ともすれば、すかしたような答えが相手の神経を逆撫でする。
「・・・ふざけないで!! それで何とも思わないなら、今すぐフェイトさんと別れて!!」
「そうじゃなくて」
 相手の激情に触れても、なのはが臆することは決してない。
「フェイトちゃんは貴女のこと好きって言ったの?」
 答えに詰まり、それまで強気だった彼女の眼に動揺が生まれ、思わずなのはから視線を逸らしてしまう。
 やっぱりね、と言うようになのははあからさまな溜息をついてみせる。
「相手の気持ちを無視してそういうことするの、良くないと思う。それは貴女の気持ちを一方的に相手に押し付けてるだけ。ただの自己満足だよ」
「・・・っ!」
 ―――ぱんっ!
 乾いた音が響き、また教室に緊張が奔る。
「バカにしないでっ!! あなたにフェイトさんが幸せに出来るのっ!?」
「・・・出来るかどうかはわからない。でも、努力はしてるつもりだし、これからもし続けるよ。フェイトちゃんが私を必要としてくれる限り、全力で。いつまでも!」
 公衆の面前で、ここまで饒舌にこんなことを言うなのはは初めてだ。
 いつの間にか出来上がっていたギャラリーの黄色い歓声に、彼女は悔しそうに顔を伏せる。
「何でっ・・・あなたみたいのが・・・フェイトさんとっ・・・」
 そこから先はもう言葉から涙になって、彼女は教室から出て行った。
「なのはっ! 大丈夫っ!?」
 その左頬をそっと擦りながら、私も泣きそうになる。
「フェイトちゃん、ちょっと付き合って」
 なのはは有無を言わさず、私の手をとって教室を後にした。


 なのはの後をついて行ってたどり着いたのは屋上だった。
 扉を閉じた瞬間。何の前触れもなく、唇を奪われた。
 触れるだけの、優しいくちづけ。
 あの子とも、同じ事をしたのに。
 やっぱり、全然違う。
 逃げられない。離れられない。足りなくなる。もっと、求めてしまう。
 蕩けるようなぼんやりした感覚の中に、押さえきれないはっきりとした衝動が生まれる。
 なのはが、これでリセット、と呟く。
「ごめんね、フェイトちゃん。今回の事、悪いの全部私だよね」
 違う。なのはは全然悪くない。
 私の心が幼いから、弱いから・・・。
「そんな・・・ことっ・・・」
 自分の浅はかさが恥ずかしくて、情けなくて。心底、自分が嫌になる。
「もぉ、どうして泣くの?」
「だって・・・だってっ・・・」
 なのはの胸の中で子供みたいに泣きじゃくった。
 どうしてだろう。負の感情に呑まれても、君の胸の中にいると不思議と落ち着く。
 ごめんなさい。なのはのこと疑ったりして、試すような事してごめんなさい。
 なのはが私のことを信じてくれるみたいに、私もなのはを信じられるようになりたい。
 どんなことがあってもなのはを信じられる強い心が欲しい。
 もっとなのはにふさわしい女の子になりたいよ。

 泣き止んで、二人で屋上に座ってぼんやり空を眺めていた。
 話したかったことがあった気もするけど、照りつける日差しに溶かされて消えちゃったみたいだ。
「ふぅ・・・今日も暑いね―」
 なのはがブラウスのボタンをもう一つ外しパタパタと襟元に風を送り込む。
 そこから覗く、目下成長中の彼女の膨らみとそれを覆い隠すものに目が奪われてしまう。思わずごくりと喉が鳴る。体感温度が上がる。
「ふふっ、フェイトちゃんのえっち」
 からかうなのはの声が少し艶っぽい。
 ・・・見せたのなのはだよ。
「フェイトちゃんがこんなえっちな娘だって知ったら、みんなどう思うだろうね」
 誘うように着崩した胸元を見せつけながら腕に押し付けてくる。その感触が官能的な記憶を呼び起こして心拍数が急上昇していく。
「そ、それはっ・・・」
 更になのはのいたずらは続く。 
「ひゃぅんっ!! ・・・な、なのは?」
「ここをこうしちゃうととっても可愛い声をあげちゃうのとか」
 甘美な危機感に、私の表情はきっと蕩けてしまっているだろう。
「誰も知らない。知ってるのは、私だけ」
 その言葉に、なのはの独占欲を垣間見た気がして、私の気持ちは一瞬で天に届きそうなほどに舞い上がってしまう。
「フェイトちゃんだって、誰も知らない私の秘密、いっぱい知ってるでしょ?」
 ぶんぶんと首を縦に振る。
 なのはの好きな事嫌いな事。私といるときにだけ見せる顔。本当のなのは。何の装いもない、素の高町なのは。
 全部、私だけの、大切。
「それって、とっても特別なことだと思わない?」
 ずるい。
 その天使の微笑みが、私に全てを許させてしまう。
 ・・・どうしよう。心臓が、鳴り止まない。
「・・・・・・なのは、キス、していい? なのは」
「いつでもしたいときにしていいんだよ? フェイトちゃん」
 ゆっくりと繋がると、頭がぼんやりして、もう何も考えられなくなる。
 ここがどこかとか、だれかにみられたらどうなっちゃうのかとか。そういうの、もう、どうだっていいよ。
 いまわたしのかんかくをしはいして、みたしてくれているきみがすべて。ほかにはなにもない。なにもいらない。

 こつん。
 と、二人の頬に。
「っはぁっ・・・。・・・紙、ひこうき?」
 開いて、二人で我に返って吹き出す。
『校内での不純同性交遊厳禁!!』
 見覚えのある字で殴り書いてあって、しっかり怒りマークまで刻まれている。
「帰ろっか」
 私としては見せつけてやってもよかったけど、それじゃ多分帰れなくなっちゃうから。
 立ち上がって服の乱れを直して、なのはが「はい」と差し出した手を「うん」って取る。
「ずっと・・・繋いでてね」
 応えるように、いつもよりちょっとだけ強く握ってくれた。その手のひらの圧迫感が、とても。
「・・・じゃないと、浮気しちゃうんだからね」
 聞こえないくらいの声でちょっと冗談めかして囁いてみた。

「・・・許さないよ。絶対に」

「えっ・・・」
 身体が震え上がった。一瞬、呼吸の仕方がわからなくなった。
 聞き違いかもしれない。そのくらい低く小さな囁きだった。
「どうしたの、フェイトちゃん?」
 目の前にいるのは、いつもの優しい笑顔を見せてくれるなのは。
「・・・なん・・・でもないよ」
 べつに、どっちでもいいのかな。


 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。14歳。中学生の真ん中。
 今、私の全ては、高町なのはによって支配されている。


(おしまい)




あとがき
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No title

初めまして!
SS全部読ませていただきました。
中でも一番良かったのはこれ…
「・・・出来るかどうかはわからない。でも、努力はしてるつもりだし、これからもし続けるよ。フェイトちゃんが私を必要としてくれる限り、全力で。いつまでも!」
全力で。いつまでも!
なのはさんらしい熱さが伝わってくるようないい台詞だと思います!
ちょっとじーんとしてしまいました…(^_^;

楽しみにしてるので、更新ガンバって下さい(^^)
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プロフィール

高町屋

Author:高町屋
高町屋は「魔法少女リリカルなのは」の二次創作を行う創作集団です。【Since 2008.11】

↓↓↓リリカルなのはの二次創作、同人活動をしている方、マイミク/マイピク募集中です。お気軽にどうぞ♪mixi pixiv Dolce

≪MEMBER≫
高町きよ:高町屋代表。企画・二次原案担当。とにかく筆が遅い。ふと気が付くと、脳内ではなのはとフェイトがいちゃいちゃしている。

木村由宇:高町屋絵師。HP管理人。振り回される方。苦労人。気が付けば一番精力的。どんなに忙しくても締め切りはちゃんと守る。見習え、代表。

幼専士タチバナ:真性のロリコン。ここ最近の高町屋の影の功労者。事務能力皆無の代表をサポートすべく、イベント参加率は絵師より高いかも。

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リリカルプリキュア(2)


【長編】魔法少女リリカルなのはNightmare(59)
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  ぷろぽーず ぱにっく!④
  ぷろぽーず ぱにっく!③
  ぷろぽーず ぱにっく!②
  ぷろぽーず ぱにっく!①
(ViVidとForceの間?/なのは、フェイト、ヴィヴィオ)
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  きねんび(前編)
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